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一期一会の本と日常のおはなし

【わたしたちをつなぐたび】母と子の出会いと

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そして、これからと。

「わたしたちをつなぐたび」

(WAVE出版 

2023年6月20日 

第1版第1刷発行)

文/イリーナ・ブリヌル 

絵/リチャード・ジョーンズ 

訳/三辺律子

 

原題は「The Child of Dreams」

(日本語訳 「夢の子」)

 

どんな物語…

美しい緑に囲まれた奥深い場所に

小学校2、3年生くらいの女の子が

お母さんとふたり、仲良く暮らしていました。

 

穏やかな暮らしが続くある日、

ふと女の子はある疑問を持ちます。

そして

その問いをお母さんに投げかけるところから、

女の子の日常は

いつもとは違った方向へ動き始めます。

 

私たちはどこから来たのでしょう。

自分が何者なのか、

物心ついたころからそれは

私たち人間誰しもの大きなテーマかもしれません。

 

当たり前にあると思っていた

両親というルーツが、もしもなかったとしたら?

それはどんな心持ちを

その人の中にもたらすのでしょう?

 

ふとしたことをきっかけに、

主人公の女の子の胸に浮かんだ疑問は、

そんな誰しもがたどり着くであろう

大きなテーマを抱いていました。

 

たとえどんなに

女の子に対するお母さんの愛が深くても

「夢から生まれた」

コウノトリが運んできた」

というお母さんの答えに

女の子はどうしても納得できません。

 

女の子は森の動物たちに

自分がどこから来たのかを聞くため

出かけることにしました…

 

この物語の魅力は…

どこから来たのかもとても大切なことですが、

これからどこへ行くのかも、

それより更に大切なことだと、

この物語は伝えてくれています。

 

物語の終盤、

女の子がたどり着いた先にいたのは、

大きな孤児院の門の前でぽつんとひとり

自分を迎えに来る誰かを待つ小さな男の子

 

その子との対話によって、

女の子の心にはお母さんの愛情が

真っ直ぐに蘇ってきました。

 

非常に重いテーマを扱いながら、

暗くなることなく、

向き合い続けることによって

道は開けていくということを教えてくれた物語でした。

 

心が穏やかに優しくなるような

グリーンをメインにした色合いの

淡く優しいイラストもとても素敵です。

 

振り返れば、

思いがけないこと思い通りではなかったことは

誰しもの経験の中にあると思います。

それがもし

自分は誰なのかという何より大切なことなら、

尚更悩み時には苦しい夜を迎えることも。

そこに視点を留めた時間のあとで、

これからに目を向けていけたら

少し違った景色が見えそうです。