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一期一会の本と日常のおはなし

【ポチャッ ポチョッ イソップ】カエルのくににつたわるおはなし

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カエルはニンゲン、ニンゲンはカエル

「ポチャッ ポチョッ イソップ」カエルのくににつたわるおはなし

世界のむかしのおはなしシリーズ

玉川大学出版部 2022年1月31日 初版第1刷)

再話:アーサー・ビナード

絵:スズキコージ

どんな絵本…

スズキコージさんの絵は決して小綺麗ではない。

黒線でモジャモジャと描かれたカエルたちは

土臭くエネルギッシュだ。

使われている色も強い。

混沌を表すシーンでの毒々しさ。

強烈で圧倒的な力を表す場面での燃え滾る熱量。

 

この物語は2000年も前に

イソップによって語られたストーリーの再話です。

それは現在、今この時を生きている人間の生き様に

ぐさりと刺さる物語。

 

どんなお話…

自由で平和で、のどかなカエルの国。

誰も偉くない、みんな平等。

でも、そのままで満足しないカエルもいる。

 

穏やかで幸せなカエルの世界を壊したのは誰?

それはカエル自身。

どうやって壊したの?

それはその平和に不満を持つカエルから始まった。

どうしてカエルは不満に思ったの?

それは「もっと もっと」と望んだから。

 

カエルは一体何をどうしたいと望んだのか。

物語が進むにつれて読者は気が付くだろうか。

それが今自分たちの身近で起こっていることと

あまりにもよく似ていることに。

 

そして不満カエルのその願いが叶ったとき

カエルは、カエルの世界はどうなったのか。

全てのカエルに何が訪れたのか………

 

これは私たちニンゲンのお話でもある。

明日私たちニンゲンがこうなっていないとは

誰にもいえない。

いえ、そうではない。

もうすでに事は起こっている。

私のすぐ隣にも、闇に覆いつくされて

取り返しがつかなくなったカエルの世界は迫っている。

 

ページをめくるたびに

スズキコージさんの怪しさの漲ったイラストで

平和から遠ざかっていくカエルの国。

そのカエルたちが自らを不幸の淵に追い込んでいく様を表した

平易で短い文章が読者の心に迫ります。

どうぞ何度も読み返し、繰り返し噛みしめてお楽しみください。