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一期一会の本と日常のおはなし

【たにしむすこ】子どもとよむ日本の昔ばなし

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懐かしさにホッ、深読みしちゃってフフフ。

「たにしむすこ」子どもとよむ日本の昔ばなし

くもん出版 2006年11月17日 初版第一刷)

再話/おざわとしお・まつむらゆうこ

絵/つだろとう

どんなお話…

この絵本は、広島県で語り継がれていた昔話の

「たにし息子」を基に再話したお話です。

 

子どものころに同様の物語を読み

その頃感じた不思議な違和感や

なぜか気に入って繰り返し読んだことを

思い出します。

 

文字通り「タニシ」が息子になるお話。

タニシが?息子?

タニシとは谷氏ではなく

田んぼや水路に生息する巻き貝のこと。

 

子どものころ不思議に思ったのは、なぜタニシ?

子どもにするには小さすぎないか?

なんで貝なの?

 

そして大人になって不思議に思ったのは

タニシをすんなり子どもに迎える若夫婦。

え~っと、抵抗はなかったの?

せめて哺乳類とか、思わなかった?

 

そして・・・

若夫婦に大切に大切に育てられたタニシの子は

立派な青年タニシくんに成長しました。

と言ってもサイズ感は変らず。

手のひらにちょこんと収まる小さなタニシです。

 

ですが、このタニシくんはしっかり者です。

自分で生計を立てようとするし

お嫁さん候補も自分で探してきます。

候補者はタニシむすめではありません。

ニンゲン、町の問屋の三人娘です。

 

出来たむすこのタニシくんですが

親に反抗するような場面が一か所あります。

人生を、もといタニシ生を賭けた

決死の覚悟の表明だったかもしれませんが

願いが叶えられなければ囲炉裏に入るぞと

親を脅すのです。ワオ。やりますね。

(ソンナコトシタラ オイシクナッチャウ⁈)

 

それに、このタニシむすこさん

なかなか人使いが上手い。

自分にできないことは信頼できる相手に頼み

困惑する相手をしっかり説得して実行させて、

最後はさらなる大きな幸せを掴み取りました。

やったー!

 

さて「なぜタニシ?」

 

農耕民族の色濃かったその昔

田んぼのタニシは今よりずっと身近な存在で

私の感じたような違和感は当時の方々にはなかったのかも。

調べてみると、生命力がとても強い存在。

今より医療も進んでおらず

子どもが命を落とすことも多かったであろう昔、

その逞しさにあやかりたい願いも

込められていた気もしました。

 

ところで、このお話のおしまいの言葉は

「とうかっちり」という昔話の結句。

お話がこれで本当に完結したことを宣言するために

日常使われていない印象強い言葉が

語り手によって創られていったと考えられているそう。

「とうかっちり」は広島県のほうで使われ

「とう」と「是つきり」の結合ではないかとの説もあります。

 

同じ広島県の昔話の結句には

「けつちりこどぢやうの目」なんて言うのもあり

どうして「どじょうの目」が出てくるのかは

今だよくわかっていないそうです。

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と、ここまで書いていたら、なにやら「あれっ」と既視感が。

自分のいい加減さやら記憶の衰えにびっくりです。

いつかやらかすのではと危惧していましたが、約1年前、同じ昔話を題材にした

絵本「たにし長者」の記事を書いていました。

読み返してみると今とは違った内容で

この時の興味の方向性がわかって面白かったです。

よろしかったらこちらも。

tokinoakari.hatenablog.com

 

ちょっとはずかしい気もしますが

4年に一度の閏日だし

これも繰り返し読みたくなる

この昔話の魅力、ご愛嬌ということで〜

 

とうかっちり