健やかな猫の日々。
「モモのこねこ」
(偕成社 2009年5月 初版第1刷)
作 やしまたろう・やしまみつ
絵 やしまたろう
このお話の魅力は…
ひとりの女の子に拾われた子猫
こんなふうに生きられたら
素敵だよなぁ幸せだよなぁと
ただただ普通に大過なく穏やかに過ぎる日々
生き物としてごく当たり前の営みが
とても輝いて見えるストーリーでした。
どんな絵本…
「モモ」は女の子の名前
作者の八島太郎さんと八島光さんの娘さん。
実際の経験に基づいた絵本のようです。
この作者のふたりは戦時中
戦争に反対し何度も逮捕勾留されたのち
軍の弾圧から逃れてアメリカに渡ります。
戦後その地で長女のモモさんは誕生しました。
物語の舞台はアメリカ西部です。
時折出てくる広々とした風景や洋風の家具に
それを感じることができます。
近くのマーケットからの帰りに
モモが見つけたのは一匹のみすぼらしい子猫
この絵本はその子猫が成長し
5匹の子猫のお母さんになった日々を描きます。
少女モモの一人語りで綴られるのは
子猫の本当に何気ない日常です。
日記をつけるように静かに淡々と
けれど日々の子猫の姿が細やかに
優しい目線で愛情を持って語られます。
イラストは黒炭の線と
鮮やかなレモンイエローが印象的。
赤や緑や黄色に黒を重ねて深みを出した
粗いスケッチ風のタッチです。
少し経つとモモが拾った子猫は
お母さんになって5匹子猫を生みます。
その子猫たちがまた可愛いです。
個性豊かに飛んだり跳ねたり、隠れたり。
一頁一頁が一枚の絵画のように美しい絵です。
どんなふうに子猫がお母さん猫になっていったか
も楽しみなところですが
子猫を見守るモモが、子猫と共に成長していく
その心の動きにも注目です。
身近にいるからこそ知ることのできる
猫たちそれぞれの個性
身近にいたからこそ感じることのできた
別れ際に生まれる感情
優しく写し出される
生き物と共に過ごす日々の
かけがいのなさを感じてほしいと思います。