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一期一会の本と日常のおはなし

【アアウをとってこい】ミクロネシアのむかしばなし

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アアウってなんでしょう?

「アアウをとってこい」ミクロネシアのむかしばなし

BL出版 2023年6月10日 第1刷)

文/秋野癸巨矢(あきのきくし)

絵/秋野不矩(あきのふく)

どんな絵本…

物語の舞台はマーシャル諸島

そのなかの小さな島のひとつ、エブ島です。

 

本の中から飛び出してしまいそうな画風が

雄大で生命力に溢れ魅力的。

 

内容も、広々とした海原を舞台にした

とてもおおらかなお話で、読み終わった後

私はこのお話が大好きになりました。

 

どんなお話…

南太平洋の大海原に点在する島々のなかでも

ひときわ小さな島、エブ島

昔、その島にはイリリクという名の長老がいました。

そして、長老の周りにはその島に住む子どもたち。

子どもはみんな、鳥になって空を飛ぶことができました。

 

そんな子どもたちのなかでも

イリリクが特にかわいがっていたペチュワクという子と

そのペチュワクの弟ジェカールを中心に物語は進んでいきます。

 

ペチュワクは茶色の鳥に

ジェカールは黒い鳥になって飛ぶことができます。

 

ペチュワクは体は大きいけどいつものんびりしていて不器用

弟のジェカールは小さいけれどすばしこくて器用です。

 

何をやっても弟に先を越されたり

いいとこどりされたりするペチュワクに、

長老のイリリクはジェカールに勝るすばしこさや

運の良さを与えてやりたいと考えます。

 

そこで思いついたのが「アアウ」です。

「アアウ」というのはとても不思議なもので、

それを得た者は素晴らしい力を

身に着けることができるのです。

 

でも「アアウ」があるのはとても恐ろしい場所、

「アアウ」を取りに行くのは命がけのことでした。

 

長老イリリクが

「アアウ」を取ってくるように頼んだのは「巨人」。

突然、見開きいっぱいの画面に

真っ直ぐ立ったら画面を突き抜けてしまうからか

思いっきり腰を丸めて屈みこみ

長老の言いつけを確認する「巨人」が登場しました。

 

さてさて、巨人は

「アアウ」を取ってくることができるのでしょうか。

 

本作の魅力を…

さすが大海原のなかで生きる人々に

語り継がれた物語はダイナミックです。

こじんまりと収まるところがまるでない。

物語の結末も、

日本だったらこうはならないんじゃないかな?

というおおらかさです。

大自然を相手に生きていると包容力が増すのかな?

日本の昔話だったら、

悲劇とまでは言わないまでも残念な結果で

お仕舞となりそうな終盤ですが、さにあらず。

これこそが本当の意味での

ハッピーエンドなのではないかなと思いました。

 

忘れがちですが、なにも運の良さとかすばしこさとか

損得にしか価値がないわけじゃないことに

ハッと気づかされた結末です。

 

おまけ…

作者による「あとがき」の一文が印象強かったので引用します。

…中でもマーシャル諸島は、どれも完全なサンゴ環礁で、高い所でせいぜい海抜一メートル、幅もせまい所では二、三メートル、嵐が来ると波濤が島を飛び越えてしまうので、子供たちは皆、ヤシの木のてっぺんにくくりつけられ、嵐が止むまでぶらんぶらんしています。

ぶらんぶらん・・・どんな気持ちなのかしら。

 

 

以前記事にした同作者の作品もどうぞお読みください。

tokinoakari.hatenablog.com