hon de honwaka

一期一会の本と日常のおはなし

【今週の絵本】ボス猫の詩

今週読んだ絵本です。

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「キャッツ ボス猫・クロウルタイガー絶体絶命」

文:T.S.エリオット

絵:エロール・ル・カイン

訳:田村 隆一

20世紀最大の詩人といわれるT.S.エリオットが書いた

『ポッサムおじさんの実用猫百科』(Old Possum's Book of Practical Cats, 1939年)

この作品は、個性的な猫たちが登場するユーモラスな詩です。

そしてミュージカル「キャッツ」の原作でもあります。

 

その中から選ばれた三篇の詩に、

「イメージの魔術師」と称されたエロール・ル・カインが、

猫を主人公に緻密で異国情緒漂う華麗なイラストを描きました。

 

テンポよく面白おかしく物語が進んでいくエリオットの詩。

その詩の世界を一場面一場面想像豊かに描くカインのイラスト。

 

それにしても、画面から溢れるくらい登場するいろいろな猫、猫、猫 たまに犬。

仕草にも表情にもユーモアがあって引き付けられてしまいました。

特に三篇目「ジェリクルの歌」に出てくる大ぜいの白黒猫のまあるいお尻の後姿は可愛くておすすめです。

 

 

【今週の絵本】ジェーンのものがたり

今週読んだ絵本です。

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「どうぶつがすき」

作:パトリック・マクドネル

訳:中川千尋

(あすなろ書房 2011年9月30日 初版発行)

優しく素朴な印象のイラストが心地よい作品。

 

タイトル読みでしたが

よくよく読み進めてみると

実在の人物をモデルにしていて

彼女の少女時代のエピソードを描いた作品でした。

 

彼女が小さな女の子のころ

(たぶん10歳から12歳くらいのころ)

どんなことに

どんなふうに興味があり

何を感じ、何を夢見ていたか

どんな行動をしていたか。

 

柔らかい筆遣いと淡い色合いで描かれたイラストはとても親しみを感じます。

 

どこにでも居そうな女の子ジェーンが

お父さんからもらったチンパンジーのぬいぐるみのジェルビーとともに

大好きな動物たちを観察したり、本を調べたり

大きなブナの木に登って未来に想いを馳せます。

 

絵本の主人公は、ジェーン・グドールさん。

裕福ではなかったけれど、子どもの頃からの情熱をずっと持ち続け学び続け、希望を実現した、世界的な動物行動学者であり環境保護活動家。

 

皆さんには、ぜひ、そのお名前と「名言」で検索していただきたいです。人間として生きるために大切なこと、心に留めておきたいことや、胸に沁みる言葉を残されています。

昨年10月1日、惜しくも91歳で旅立たれたとのことです。

【今週の絵本】名前にまつわるおはなし

今週読んだ絵本です。

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「おとなしい きょうりゅうと うるさい ちょう〈めずらしい交換〉」

文:ミヒャエル・エンデ

絵:マンフレット・シュリューター

音楽:ヴィルフリート・ヒラー

訳:ことう えみこ

文章と絵に加えて、音楽、楽譜が掲載されている絵本。

楽譜は「序曲」に始まって、短いものから長いものまで絵本の随所にちりばめられています。

また、訳者のあとがきによると、日本語訳には苦心された様子。原語であるドイツ語でしか味わえない言葉遊びや韻があるからです。

音にこだわりのある作品です。

 

お話は名前に纏わるもの。

活発で元気いっぱい、むしろ乱暴者のような恐竜ですが、ある日読んだ本のなかで、自分が「おとなしいきょうりゅう」と銘打たれていることを知ったのをきっかけに、体から力が抜け、しょげかえり寝込んでしまいます。

一方、お洒落でエレガント、騒がしいことは嫌いなはずの紳士なモンシロチョウは、羽音騒がしく通りかかったマルハナバチから自分が「うるさいちょう」と呼ばれていることを知ります。知ったとたんにチョウの人生も一変、華やかな生活を捨てて荒野にひとり佇むことになってしまいます・・・

 

読み始めてまず心に浮かんだのは、絵本を開いた途端に現れた楽譜に、「楽譜が読めたらなぁ」。いくら楽譜を見つめても、なんの音もしないので、とりあえず読み進めることに。楽譜がわからなくてもウイットに富んだ文章とユニークな絵で愉しめます。

確かに名前って影響力大きい。結と付いたら美しく舞えそうだし、翔ぶと付けてもらえたら二刀流になれそう。作者のあとがきによると、ミヒャエル・エンデさんも「エンデ(終わり)」をだいぶん周りからいじられていたようです。

 

さて、一度読み終わってからも、しつこく楽譜が気になりました。なにか方法は、と「序曲」の写真を撮って「なんでも知ってる(と私が思っている)AIさん」に質問。

すると、「ドラゴンクエスト」の曲だという思ってもみなかった回答がありました。ドラゴン、近いけど・・・楽譜にある文字は「序曲」のみ。ドラゴンに繋がったのはなぜなのか不思議です。

しかしその曲でないことは明らかなので、作中にある別の曲を質問してみました。

すると、今度は大正解。しかも先に送った曲についても「前回の推測に誤りがあり失礼いたしました!」とお詫びの言葉まで添えられていました。

曲の試聴についてはYouTube動画検索のための日本語キーワードを丁寧に案内してくれたので、調べてみましたが納得のいくものが見当たらず。

諦め悪く原題「Der Lindwum und der Schmetterling」で検索したら1つの動画が見つかりました。

訳者のあとがきによると、実はこの原題にも言葉遊びの意味が込められています。今度は、ドイツ語が分かったらなぁ・・・

 

この絵本は、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)の「1981年・最も美しい50冊の絵本」賞を受賞しています。

 

【今週の絵本】もう一歩、掘り進めていたら

今週読んだ絵本です。

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「サムとデイブ、あなをほる」

文:マック・バーネット

絵:ジョン・クラッセン

訳:なかがわ ちひろ

(あすなろ書房 2015年1月20日 初版発行)

 

見た感じ小学校5,6年生くらいの少年ふたり、サムとデイブ。

似たような背格好に、似たような色違いのキャップを被り、

ふたりとも手にはスコップを持っています。

どちらかの飼い犬でしょうか、犬が一匹そばにいます。

何がきっかけかはわかりませんが、

とある月曜日におじいちゃんの家の庭で穴を掘る、

ひたすら掘る、それだけの話です。

 

掘る理由は「すっごいものを みつける」。

ふたりは掘って掘って掘り続けます、が、「すっごいもの」は出てきません。

ただ・・・私たち読者には見えています。

あと少し、ほんの少し掘ったら、そこには・・・それなのに、それなのに。

 

探しているものや大切なものって案外、

端で見ている側には見えているけど、

あともう少しの目の前まで来てるのに、本人は気づかないままスルー

これって誰の人生にもあることだよなぁと、

自分の人生も、もしかしたら、一歩先掘り進めていたら

今とは違う道を選んでいたら

でっかい「すっごいもの」を手にしていたかもしれないと思ったお話でした。

 

いやいや、過去形はまだ早い?

これから掘ってみれば、もしかしたら。

 

そういえば、ふたりの他には犬だけと思っていましたが

よく見れば猫もいました。

ただし、犬はふたりと一緒に穴掘りに精を出しますが

猫は穴の上からそんな彼らをジーっ見つめて、最後まで穴掘りはしてません。

 

お話の締めくくりはといえば、

穴を掘り続けたふたりと一匹の結末はこれまた思いがけないものです。

掘った先に何が待っているのかは絵本を読んでのお楽しみに。

 

【今週の絵本】19世紀詩人の詩とともに

今週読んだ絵本です。

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「ハイワサのちいさかったころ」

(HIAWATHA'S CHILDHOOD)

文:ヘンリー・ワズワース・ロングフェロー

絵:エロール・ル・カイン

訳:しらいしかずこ

(ほるぷ出版 1989年7月10日 第1刷発行)

エロール・ル・カインさんの絵に惹かれ、読みたいと思った作品。

ヘンリー・ワズワース・ロングフェローさんの叙事詩の世界を

非常に細密で神秘的で夢見るような雰囲気の絵で表現しています。

描かれるのは、凍てつく冬の森であったり蛍の光がきらめく木立の中であったり、

その時々で様々な表情を見せる美しい自然やそこに住む動物たちと

小さなハイワサ坊やと彼を守り育てるお祖母さん。

 

一通り最後まで読み終わったのちに、実は読む前から気になっていた

「ハイワサ」って誰?と検索してみました。

ハイワサはハイアワサ(Hiawatha)とも表されます。

そして実在の人物です。16世紀の北米先住民族の指導者で、争い続ける5つの部族をまとめ、平和へと導いた伝説的ヒーローであり、この時誕生したイロコイ連邦(ハウデノサウニー)の創設者のひとりです。

 

ハイワサの名は、19世紀半ばにロングフェローさんが『ハイアワサの歌』(The Song of Hiawatha)を発表したことでアメリカ全土で知られることになったそうです。正にこの絵本に詠まれているのはそのハイワサの子どものころのこと。

自然の森羅万象に驚き、森の動物たちに話しかけるハイワサは、そこから何を学び取っていったのでしょう。

 

ところで、北米の先住民族はなんとなくインディアンかなって思いましたが、さて、イロコイ連邦って何?と、また検索。

ウィキペディアによるとハイワサがまとめた5部族に1部族が追加され「北アメリカアメリカ合衆国ニューヨーク州オンタリオ湖南岸とカナダにまたがった保留地を持つ、6つのインディアン部族により構成される部族国家集団をいう。」

AIに聞いたら「イロコイ連邦は参加型民主主義と平和維持のシステムを先史時代の北米に確立したことで知られています。」とありました。

 

アメリカ独立戦争に巻き込まれたのを機に、独立した地位も土地も喪っていったそうです。また、ウィキペディアによると、イロコイ連邦では年配の女性の地位がとても強かったとあります。伝統的に祖母が子供を育てることになっており、部族の中で尊敬されコミュニティのリーダーを任命したり解雇できる立場にあったそうです。本作でもハイワサを育てているのはお祖母さん、てっきりお母さんがいないからかと思って読んでしまいましたが、理由はここにありました。

何も知らずに読んでも美しく壮大な印象を受けましたが、成り立ちや習慣を知ってから再読すると、また違った景色も見られそうです。

 

 

【今週の絵本】ななほんだからなな

今週読んだ絵本です。

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「たこのななちゃん」

作・絵:なかがわちひろ(中川千尋)

(徳間書店 1997年4月30日 初版発行)

 

遠い海から、お父さんの船でかなこのところにやってきた子どものタコ。あの8本足の海洋生物、たこ焼きでお馴染みのタコが主人公のお話です。

もちろん、このお話の中でたこ焼きにはなりません。

 

船のスクリューに挟まれて足が1本なくなり、船長のお父さんに保護された子だこ。

もうひとりの主人公かなこは、お父さんからその子を預かることに。そこでかなこは足が七本になった子だこに「ななちゃん」と名前をつけます。

かなことななちゃんは、すぐに意気投合。「たこぼうし」や「たこまふらー」になって、かなこにぺったり引っ付きます。ついには、かなこが通う小学校にも一緒に行くことに。七本の手じゃなく足で上手にピアノを弾いたり、七本の縄跳びを同時に回したり。かなことななちゃんは、それはそれは楽しい毎日を過ごしていましたが・・・

 

こんなに可愛くたこを描くことにかけて中川千尋さんの右に出るものないんじゃないか、というぐらいななちゃんの様々な仕草と表情が可愛くて微笑ましい。

かなこと元気に過ごすうち、ななちゃんの8本目の足も伸びてき始めました。お話にはちょっぴり悲しい別れもあります。夕焼け色に染まる海に面して手をつなぐ、かなことななちゃんの後ろ姿には切なさが滲んでいました。

生きものを大切に思う気持ちや人との繋がりについて考えてみるきっかけになる絵本です。

【今週の絵本】猫派も犬派も

今週読んだ絵本です。

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「白猫」

再話・絵:エロール・ル・カイン

訳:中川千尋

(ほるぷ出版 2003年7月31日 第1刷発行)

白猫

 

この作品の原作は、17世紀フランスの作家、オーノワ夫人(Madame d'Aulnoy)によるおとぎ話『白いねこ』(La Chatte blanche)です。

オーノワ夫人は、「ドーノワ夫人」や「ドルノワ夫人」と言われることもあります。

1697年に童話集『Les Contes des Fées』を刊行しましたが、この作品は子ども向けではなかったそう。当時のフランス上流階級の人々を楽しませるため”優雅なひまつぶし”として書かれたものだそうです。そして、この童話集のタイトルが、のちに「フェアリーテール」という言葉の語源になりました。

同時代には「赤ずきん」や「シンデレラ」を書いたフランスの作家シャルル・ペローがいて、このふたりが当時のおとぎ話において双璧をなすと言われています。

 

さて、そんなオーノワ夫人の代表作とも言われる「白いねこ」を再話したエロール・ル・カインさんは繊細で絢爛豪華なイラストから「イメージの魔術師」と称されている方。1941年にシンガポールで生まれ、日本でも暮らしたことのあるイギリスの絵本作家、イラストレーター、アニメーターです。

呪いで白い猫に姿を変えられたお姫様が、3人の王子のうちの末の王子と出会い愛し合って呪いを解かれ結婚する大筋は原作と同じですが、この3人の王子に王様が課した使命がユニークです。原作では3つの試練が与えられたところ、再話ではただひとつ「この世で一番賢い犬を連れて来た者を、次の王子にしよう」。

そのためか、絵のなかには猫より犬のほうがたくさん登場します。フレブル、トイプー、ポメラニアンに赤ちゃんゴールデン(かな?)と、どの子も特徴を細やかに表現したうえ愛らしい。

また、末の王子がたどり着いた猫の城は、大きな満月を背に、ちょっとスフィンクスに似た神秘的な佇まい。呪いを解かれて人間の姿に戻ったお姫様のシーンは日輪が輝くごとく、まさに豪華絢爛。お話の流れとともに描かれる高貴な雰囲気の中にユーモアのあるイラストに引き込まれること間違いなしです。

犬まみれのページも多く、猫好きの方だけでなく、犬派の方にもおすすめしたい作品でした。