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一期一会の本と日常のおはなし

【三つ編み ラリタの旅】娘の未来のために

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娘ラリタのために母スミタの取った行動とは。

「三つ編み ラリタの旅」

(アンドエト 2021年8月18日 初版第1刷発行)

作/レティシア・コロンバニ  

絵/クレマンス・ポレ 

訳/新海知絵

どんな絵本…

こちらの作品には原作の小説があります。

それは2017年5月にグラッセ社から発行され

ベストセラーとなった「三つ編み」というタイトルの

フランス語で書かれた小説です。

 

舞台はインドです。

明るく鮮やかな色合いの服を着て

優しく微笑む母子が描かれた絵本の表紙からは

想像ができなかった物語の世界が

ページをめくるごとに胸に迫ってきました。

 

絵本の中では、画家による美しいイラストと共に

フランス語の原文が記され、そのページ全体の下部

幅3cmほどの茶色の帯状スペースに

白抜きで日本語訳が添えられています。

 

どんな物語…

学校に行ったことのないラリタの両親

 

「触れてはいけない者たち」

を意味する不可触民としての生活

 

農民の家の、土で掘った穴で用を足す

トイレの掃除が母スミタの仕事

 

父ナガラジャンが素手で捕まえた

野原のネズミが家族の食事

 

物語の始まりには

そこに生まれたために

何世代にも渡って続く差別的境遇が

克明に鋭い言葉で描かれていきます。

 

なんとか娘ラリタを

学校に通わせようとする母スミタですが

村の中の学校では上手くいきません。

とても酷い目に合い

学校から戻ってきたラリタを見て

スミタはある決心をします。

 

その決心を実行するのは命がけです。

それでもスミタは

娘の未来のために立ち上がります。

 

 

タイトルの「三つ編み」にも重要な意味があります。

インドの女性たちは、

生まれてから長い間髪の毛を切らず

中には一生のばし続ける女性もいるそうです。

ラリタの髪もスミタの髪も長くのばされています。

この長い髪の毛が、

母子を新天地へ導くための重要な役割を果たします。

 

どうぞふたりの旅の行方を

ぜひ絵本を読んで見守ってください。

 

物語の要所要所にインドならではの

習慣や信仰も描かれていて

私はこの世には知らないことが多く存在し

自分の価値観がいかに小さな小さな範囲に

留まっているかを目の当たりにした気がしました。

 

スミタが信仰しているのは

ヒンドゥー教ヴィシュヌ神ですが

クリスマスが近づく今の季節にこの絵本を読んで

同じ地球に住んでいる

自分とは全く違う人生を送っている誰かに

思いを馳せるきっかけにしていただきたいと

強く思った一冊です。