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一期一会の本と日常のおはなし

【モナのとり】フランスの作家さんの絵本

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原作は2008年フランスで出版されました。

「モナのとり」

新日本出版社 2022年6月 初版) 

作 サンドラ・ポアロシェリフ  

訳 水橋はな

この絵本のテーマは…

フランス語の「sans-papiers」

という言葉をご存じですか。

 

日本語に訳すると

不法滞在者

不法入国者

身分証明書のない人

という意味になります。

 

本書の原作はフランス語で書かれています。

その作品と作者について調べていくうちに

この言葉に出会いました。

 

日本にいると

あまり馴染みのない事かもしれません。

私は、知識としては知っていますが

そういう立場の方に実際会ったこともなく

身近に感じたことはありませんでした。

絵本の構成は…

頁を開くと見開きの

右側

アクリル絵の具やコラージュで描かれた

細やかで可愛らしく夢のあるイラスト

メルヘンチックな淡い色合いと形で

明るさと楽しさを感じます。

 

その隣、左側の面は

白い画面に

黒鉛筆書きの細やかで繊細なイラスト

主人公の8歳の女の子モナの語る物語の文章

モノクロで描かれています。

 

楽しいお伽話が始まるのかと思いましたが

少し様子が違っていました。

どんなお話…

物語はモナの一人称で語られます。

モナは楽しい学校生活を送っていますが

なにか悩みがあるようです。

 

その悩みの原因の象徴が

いつもモナのそばを離れない黒い鳥。

 

学校で黒い鳥がくっついているのは

モナだけ。

いえ、あとひとり

同じクラスのモーリシオにもくっついています。

 

この鳥は一体なんなのでしょう。

 

黒い鳥はモナの家族にもついています。

 

モナたちの日常を不安定にするもの

それが黒い鳥のすがたになって

モナのそばにいつもついているのです。

 

モナには少女らしい夢や希望もあります。

友だちとの楽しい学校生活が

明るい色で描かれる一方で

黒い鳥が大きくなって迫って来て

眠れない日もあります。

「sans-papiers」について…

さらに詳しく説明を調べると

適切な終了許可証または

身分証明書を持たない移民」であり

 

トロールは常にチェックを行っています

 

そして

sans-papiersは国境に戻されます

と書かれていました。

 

モナの黒い鳥は

戦禍のため逃れてきた母国へ

送り返されてしまう不安と恐怖。

 

同じ黒い鳥をつけていた

学校の友だちモーリシオは

ある日突然いなくなりました。

母国へ強制送還されたようです。

 

それでも

モナは希望を持ち続けています。

きっといろいろなことが良い方向へ行く、と。

 

そこに住んでいながら

安定を保障されない理不尽さは

子どもの心にも重い影をもたらしますが

日常を明るく生きる

モナのすがたが描かれる本書。

 

絵本を読んだ子どもたちが

「sans-papiers」を知り

同じこの世界に生きる

どこにでもいる普通の少女の困難を

自分事として考えるきっかけに

なるようにと創られた絵本です。