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一期一会の本と日常のおはなし

【にげろ!にげろ?】インドのむかしばなし

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マイブームのインド昔話です。

「にげろ!にげろ?」インドのむかしばなし

(光村教育図書 2008年4月 第1刷) 

再話・絵 ジャン・ソーンヒル  

訳 青山南

どんな絵本…

本書のあとがきによると、このお話は、

インドにつたわるジャータカのお話をもとにしています。

とあります。「ジャータカ」ってなんでしょう。

知らなかったので、ネット検索してみました。

解説しているサイトは多く、諸説あるようですが

ウィキペディアによると

仏教でいう前世の物語のこと。本生譚ともいう。釈迦がインドに生まれる前、ヒトや動物として生を受けていた前世の物語である。

お話には必ずお釈迦様が

ヒトや動物の姿で現れて

善行・功徳を行う説話文学としても有名。

現存するパーリ語本では、547話あるそう。

パーリ語とは、「南伝上座部仏教の典籍

(『パーリ語経典』)で主に使用される言語)

 

本書はそのジャータカの説話を基に、

カナダ生まれの著者が再話しました。

 

著者の描くイラストも見どころ満載です。

南国の広大な森林、

ヤシの木やマンゴーの森の濃密な緑や、

おびただしい数の様々な動物たちが

丁寧で細密に描かれ厳かな雰囲気も湛えています。

どんなお話…

この絵本の原題は「THE RUMOR

日本語に訳すると「噂(うわさ)」です。

 

いつも心配ばかりしている若いウサギがいました。

たべるものがなくなったら どうしよう、

あめがふったら どうしよう、

わたしだけ どうして 目がグリーンなんだろう、と。

一部心配してもどうにもならないことまで心配。

そんな極度の心配性の

このたった一羽の若いウサギの大きな勘違いから

「噂」は「噂」を呼び

どんどん膨らんでとんでもないことに…

 

こんな群集心理は

つい最近、コロナ禍の最中に見たような気が。

というか私も「噂」に踊らされました。

 

物語はお釈迦様と思しき動物が現れて

混乱した状況を的確な対応で収めてくれます。

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コロナ禍のなか

私は最初のウサギにはならなかったけど

途中で登場したシカやイノシシには該当しました。

 

なぜ「ジャータカ」が

2500年以上に渡って語り継がれているのか。

 

本書のテーマである「噂」は

今も脈々と人間の心に備わっているもの。

 

人間の変わることない本質を

誰かひとりを悪者にすることなく

おおらかに描いていて好感が持てる作品でした。

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