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一期一会の本と日常のおはなし

【はじまりのはな】渡り鳥ローザの秋から春の絵本

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春は旅立ちのとき。

「はじまりのはな」

THE FOREVER FLOWERS

くもん出版 2014年9月 初版第1刷) 

文 マイケル・J・ローゼン  

絵 ソーニャ・ダイノウスキ  

訳 蜂飼耳

この絵本は…

絵本というと、文章が先

または文と絵が同時に創られるものと

思い込んでいましたが

本書の解説を読んだところ

この絵本はまず画家によって絵が描かれ

その絵を見て作者が物語を紡いだそうです。

 

画家に

私の絵はこのためにあったのだと、

そう思わせてくれるような物語でした

と言わしめた物語です。

この物語は…

冬がもうすぐ訪れそうな気配を

そこここに感じる秋の終わりごろ

渡り鳥のローザが主人公です。

 

ローザは落ち着いた薄茶色の小鳥

羽毛の毛並みが細部まで描かれて

柔らかくふわふわしています。

 

ほっぺのところが

赤みがかっているのが特徴のローザ

 

ローザのいる秋の森は

これから冬の休みに入る直前のすがた。

全てが枯れた色をしています。

 

ローズやローズの仲間の渡り鳥たちの

ほっぺの赤

その色にそっくりな花

〈ほっぺのはな〉の色だけが

枯れた景色のなかに華やいでいます。

 

ローザは首にかけたバックに

大切な〈ほっぺのはな〉を入れて

渡りの旅に出ようとしますが

途中で川に落ちてしまいます。

 

危ないところを助けてくれたのは

犬のミールとその飼い主のアンナでした。

三人が織りなす

いえ一羽と一匹と一人が織りなす

ひと冬の静かで美しい営みが

抑えた色の情景に映えるい色を散りばめた

細部まで緻密に描かれたイラストと

簡潔な言葉で語られていきます。

 

ローザが大切に守った〈ほっぺのはな〉

ヘレボルス・別名クリスマスローズのことです。

 

春が近づくころ、その種が見事な花を咲かせます。

〈ほっぺのはな〉たちに囲まれた

ローズとミールの

喜びと希望に満ちた瞳が心を打ちます。

春は花咲く喜びの季節でもあり

そして旅立ちの季節でもありました。

 

ローズの元に渡り鳥の仲間が迎えに来ます。

 

三人に

いえ、一羽と一匹と一人の心に

別れのさみしさが込み上げますが

ローズは渡り鳥、故郷へ向けて飛び立ちます…

 

赤い色が美しく、ちょっと切ない

こんな春もあるのですね。