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一期一会の本と日常のおはなし

【なみのいちにち】波はどんな気持ちでいる?

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キラキラと輝く海と波の絵本。

「なみのいちにち」

ほるぷ出版 2022年6月22日 初版第1刷発行)

 作  阿部 結(あべ ゆい)

 

どんな絵本…

真夏にぴったりな

海そして波の素敵なところがたっぷり描かれた

明るく爽やかな絵本です。

 

最初のページを開くと目に飛び込んでくるのは

朝、海の向うから昇る太陽

水平線の彼方まで、波が陽の光にきらめいて

まぶしさと新しい一日の始まりを祝うような

喜びに包まれた爽やかな海景色。

 

柔らかな色合いの水彩絵の具で染められた空は

太陽の白く輝く光線に照らされて

黄色味を帯び、淡いブルーと溶け合って

まばゆいばかりです。

海は波の動きに合わせて

太陽の光を波の先端に受け

みずみずしい光の粒々になって煌めいています。

 

このあふれるような幸せを感じる光景を

さらにじっくりよくみると

向かって左下のところに

大きな口を開けちょっと眠そうな表情の波が。

この波が主人公のようです。

波目線で語られ描かれる「波の一日」の始まりです

 

波際ではいろいろなことが起こります。

 

鳥たちが眠りから覚める

お父さんが漁に出るのを見送る母子

小さな男の子は少し波が怖いみたい

でも波の歌をよく聞いてみると

「さん ささーん さん ささーん」

男の子は波に近づくことができるように。

 

太陽が真上で照らすころには

沢山の海水浴客でにぎわう夏の海辺

 

茜色に染まりつつある波間では

風に飛ばされたおじいさんの麦わら帽子が漂い、

それを拾っておじいさんに渡す若者がいます。

 

波打ち際ではいろいろな出会いがあります。

 

そして夜になると

波と遊ぼうとするのは人間だけではありません。

白くてふわふわしたものたちが

一斉に波の上を飛び回ります…

 

波の一人称で描かれた爽やかな波の一日を

ぜひ楽しんでください。

 

読後の感想…

たまたま同時並行で読んでいた

第168回芥川賞受賞作「荒地の家族」でも

海が重要な役割を果たしていますが

こちらの海は主人公の辛さや生きにくさを

象徴するかのような存在です。

 

「荒地の家族」の作者も

本作の作者も同じ宮城県出身の方。

どちらも12年前の「あのとき」を

おそらくはその地で経験されているのだろう

と思いながら読みました。

 

海も波もただそこにそのときそのまま

海は海、波は波としてあるだけなのですが

人の置かれている状況や

人にとってどのような影響を及ぼすかで

その印象、受け止められ方は

明るくも恐ろしくも変化していきます。