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一期一会の本と日常のおはなし

【ダーラナのひ】ひとり旅の少女に話しかけたのは?〈絵本〉

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夕から夜明けへ向かう色彩の豊かさ。

「ダーラナのひ」

偕成社 2021年11月 初版第1刷) 

作者 nakaban

どんなお話…

どこか太古の匂いがする

民族衣装を着た少女がひとり

旅をしているのか

彷徨っているのか

 

目的がある旅なのか、そうでないのか

 

海を見ながら歩く少女の名前はダーラナ

その海は今、金色に近い黄色に染まる

 

波がダーラナにささやく

波打ち際に来るように

 

しだいに海の黄色が赤色に溶けていく

燃える夕日に染まる海

 

夕日もダーラナにささやく

少し休んでいくように

 

 

海に漂う木の枝もダーラナにささやく

枝を集めて焚き火を

 

黄土色の海砂に貝や海藻が輝いている

 

焚き火の準備ができたころ

夕日が沈みかける

海辺は濃い紫色の世界を連れてきて

ダーラナは急いで火をつけようとする。

けれど…

タイトルのダーラナのひ

ひはでありでもあり

 

マッチが見つからず焦るダーラナ

このまま夜になれば寒さに凍えてしまう。

 

そのとき

沈む夕日の最後のひとかけらのひ

小枝のなかにとびこんで

小さな明かりを灯しました…

表紙絵の中で

民族衣装を纏い、一文字に結んだ唇

印象的な大きい瞳でこちらを見つめる少女は

どこへ行こうとしているのでしょう。

 

海の風にうながされ

小さな種火に息を吹き込むと

火はゆらゆらと立派な焚き火に。

 

焚き火もダーラナに話しかけます。

ダーラナ ダーラナ こんばんは

 

焚き火に照らし出されたダーラナの顔は

喜びに満ちています。

 

一心に火を見つめながら

ダーラナは何を思っているのか。

 

遠い記憶、どこかで見たことのあるような風景

火はダーラナの何かを呼び覚ましたようです。

ときにはささやくように

ときには歌うように綴られる

詩のような言葉たち

 

黄や赤や紫がまじりあって描かれる

時間と共に移り変わる海の色

 

そして

ささやかなともしびから

あかあかと勢いよく燃え盛り、また

すこしずつ小さくなっていく

 

熱を帯びた「ひ」がこちらにも伝わる

リズミカルな筆づかいに

力強い油彩画を見ている印象を受けました。

 

 

もう いかなくちゃ

ダーラナの旅は

これからも続くようです。

どこまでいくのでしょう。

長い旅になるのでしょうか。

 

そんなダーラナのひとり旅には

きっといつも「ひ」

地球の命の輝きが寄り添っています。

作者について…

勝手に外国の方かと思い込んで絵本を手にしましたが

作者のnakabanさんは1974年広島県生まれ。

本書の作者紹介文によると

旅と記憶を主題とし、絵の中を旅するように風景を描く。

とあります。絵画を中心に、絵本や映像作品など

さまざまな方面で活動されています。

 

こちらはnakabanさんによるアニメーション作品の予告編

とても幻想的な雰囲気です。

www.youtube.com