hon de honwaka

一期一会の本と日常のおはなし

【しりっぽおばけ】アメリカのテネシー州の昔話

当ブログではアフェリエイト広告を利用しています

未開墾地が舞台です。

「しりっぽおばけ」

ほるぷ出版 1997年8月 第1刷) 

再話 ジョアンナ・ガルドン  

絵 ポール・ガルドン  

訳 代田昇

暑さの最中、少しでも涼しくなりたくて

お化けのお話を読んでみることに。

結論から言うと、予想外の展開に、

けっこう寒い思いをしました。

どんな絵本…

原作が描かれたのは、1977年。

原題は「THE TAILYPO-A Ghost Story」

 

教師だった著者が教えていた小学生たちに

自身が祖父から聞いた昔話をしたなかで、

特に人気が高かったのがこのお話だったそう。

そこで著者はお話の由来を調べ

再話し絵本にしました。

どんなストーリー…

登場するのは

少々頑固そうな

山で独り暮らしをするおじいさん

三匹の猟犬たち ウノ、イノ、コンピチコ・キャリコ。

 

そしてもうひとつの存在

 

その日おじいさんは狩りに出かけましたが

思ったように獲物が獲れません。

仕方なく家に帰りましたが

腹ペコで寝るのもままならないでいました。

 

すると部屋の片隅の穴から

何かが出てくるではありませんか。

よく見るとそれは

何者かの「しりっぽ」(しっぽ)。

 

おじいさんは大急ぎで「しりっぽ」を

ナイフで切り取り、料理して

食べてしまいました。すると…

 

絵本のイラストは

著者の実の父親が手掛けています。

黒い鉛筆と抑えた色合いの水彩画

 

おじいさんの着るものや

掛布団のベースとなる

薄く濁りのある水色の静かな色合いが、

たった一人の山小屋で起きる

不気味な出来事の怪しさを醸し出しています。

おじいさんが得体の知れない尻尾を

食べてしまうのもびっくりですが、

ここからの展開も私はドキリとしました。

 

身も蓋もないというか

恐怖へまっしぐらというか。

 

危うい状況でも、どんでん返しがあって

救いの手が伸びてきたり、

死んでも生き返ったりするストーリー展開に

いつの間にか慣れていたようで、

最後まで無慈悲なまま進み、

そのまま終わるこのお話に驚き寒々。

 

このお話を小学生たちが

特に気に入っていたということも何故と。

 

大人の予定調和を許さない

無邪気な残酷さでしょうか?

いえいえ、残酷なのではなく

喪失の恐怖が身近ではないからこそ

純粋に展開を楽しめるということかな。

 

物語の中の生死にこだわるのは

私のほうに歳月と経験の影響が

重く響いているからかと、

考えさせられるお話でもありました。

f:id:tokinoakari:20230716215028j:image