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一期一会の本と日常のおはなし

【科学はこのままでいいのかな】進歩?いえ進化でしょ

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進歩と進化の違いは?

「科学はこのままでいいのかな」

ちくまQブックス 

筑摩書房 2022年9月30日 初版第1刷発行) 

著者 中村桂子

 

読もうと思ったきっかけは…

目次のなかの一文に心惹かれました。

その言葉は「人間は生きものである」

 

今では当たり前のことに思われますが、

本書によると20世紀前半までは違ったそうです。

 

科学的に人間が他の生きものと同じ生きものである

と証明されたのはごく近年になってからのこと。

 

また著者は

現在人間は生きものであると思っている人も、

本当の意味で理解していないのでは?

と疑問を投げかけています。

 

どんな内容…

DNAがどのように発見され認められていったか

という科学の歴史の重要な推移から

 

異常気象やパンデミック

利便性ばかり追求される世の中など

現代社会の問題とされている事柄と科学との関わり

 

そして

「人間は生きものであり、自然の一部である」

その意味での生きものとして

これからどのように未来を生きていったらよいか

科学の立場から考えるきっかけを提示しています。

 

小中学生くらいを対象とした本ですが

進化論ってなんだっけ?

とか

ゲノムってどういうこと?

と科学の基本的な事柄について

今さら聞けないと思っている大人にも

(わたしのことですが)

ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 

大変わかりやすく読めて理解が深まり

思い違いしていたことも正されました。

 

目次と、本文より心に留まった言葉を少し抜粋します。

目次

◇はじめにーーーどう生きるかを理科の時間に考えよう

第1章 20世紀科学の最大の発見の一つ

    遺伝子の本体であるDNA

第2章 人間は生きものである

第3章 生命科学から生命誌

第4章 現代社会の問題点を明らかにする

第5章 便利はとてもよい・・・だろうか

第6章 進歩でなく進化を考えよう

第7章 生きものに学び

    私たちとして生きよう

第8章 生きものに学ぶ これから

 

 

本作による著者の大事なメッセージのひとつは

「人間はこれからどう生きるか」

研究によって明らかになった科学的事実に向き合い

どう生きたらいいのかを考えてほしいと言っています。

 

第1章より

DNAを通して、親や兄弟だけでなくすべての人をつながっていることを感じながら、ほかの誰でもない自分独自のDNAが入った細胞を活かしていくのが、生きものである人間としていきることになります。

 

第3章より

…折角、科学が私たちは生きものたちと共にあることを明らかにしたのですから今や「中から目線」が重要です。

 

第5章より

…車などの機械は出来上がり、つまり結果で評価されるけれど、人間、つまり生きものにとって大事なのは過程(プロセス)なのです。生きるということは時間を紡ぐことであり、その過程の一つ一つに意味があるのであって、先を急いでは本当に生きていることにはなりません。…

日本は長寿社会、何歳まで生きられるかと

先の年齢、長生きにばかり目が行きがちですが

その日その日の今と、その過程にこそ

大切な時間があることを科学が教えてくれます。

 

こちらは著者が名誉館長を務める

JT生命誌研究館」のHPです。

www.brh.co.jp

 

私が次に読んでみたい著者の作品も。