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一期一会の本と日常のおはなし

【きたきつねとはるのいのち】手島圭三郎さんの絵本

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今日から3月、みなさんに喜びの春が訪れますように。

「きたきつねとはるのいのち」

いきるよろこびシリーズ

(絵本塾出版 2021年4月 初版) 

絵・文 手島圭三郎 

この絵本は…

本作を持って2020年に

引退を表明された手島圭三郎さん。

 

1935年北海道生まれの木版画家・絵本作家。

 

引退の理由は体力的なもののようです。

 

木版画で1作品を創り上げるには

構想と下絵づくりに3~4カ月

版画づくりと刷り上げに3カ月かかります。

1頁につき4枚の版木が必要で

全頁で70枚の版木(55cm×39cm)になります。

 

1年間大変な労力をかけて1作品が出来上がります。

80代中ごろまでこの制作活動を

続けてこられたことに感銘を受けました。

 

私が作者の作品を読むのはこれで2作目。

以前読んだ「はいたかのふゆ」は

この作品より20年ほど前に創られたもの。

 

この作品でも独特の色合いや雰囲気は健在です。

北の大自然に生きる生きものたちのすがたが

作者ならではの目線で変わることなく描かれています。

 

本作は作者が70歳になってはじめた

「いきるよろこび」シリーズの最終作。

このシリーズは

老境に至ったからこそ感じる生きること死ぬこと

命の素晴らしさを表現したいとの

思いを込められたシリーズのようです。

 

前に読んだ「極寒に生きるいきものたち」の

作品とはまた趣きの違う

穏やかな印象も受けました。

どんな物語…

「春」を迎える生きものたちがテーマです。

 

まだ雪に包まれた3月の北海道の大自然が舞台

 

冬の間に生まれた子ギツネと母ギツネのために

父ギツネは食べ物を探して山間を歩いていきます。

 

そこで父ギツネが見たのは

厳しい冬を乗り越えた生きものたちの喜び

 

ひぐまの親子にはひぐまの

アカゲラのオスにはアカゲラ

モモンガの家族にはモモンガの

雪うさぎにもエゾリスにも

それぞれの喜び方があります。

 

作者の版画絵は

生きものそのものの

リアルで逞しく躍動感に満ちた動きを

見事に捉えて

見ている側に、生命の輝きや力強さを

ありのままのかたちで伝えてくれます。

 

本作には画面いっぱいの大自然のなか

たくさんの鳥が飛び交い

動物たちが木に登ったり

大地を駆けまわっている頁があります。

 

なんと生き生きとして

命の輝きに満ちている光景でしょう。

 

木版画の特徴である削られた木目に彩色された

金に近い黄色がとても美しく温かみがあり

春の訪れを予感させて

ずっと見ていたいような気持ちになりました。

以前記事にした作品です。

よろしければこちらもご覧ください。

tokinoakari.hatenablog.com