なぜか地獄と見ると手に取ってしまいます。
「じごくへいった三人」
行事むかしばなし・八月(お盆のはなし)
(佼成出版社 1992年10月20日第2刷発行)
文 谷 真介
絵 赤坂三好
お盆のある時期だからか、お年頃だからか
地獄と見ると読んでみたいと思う昨今です。
それにしても、お盆から早や十日経ちましたが
釜茹でされてるような暑さが続いてますね。
どんな絵本…
大まかな筋書きは前回記事にした
こちら「じごくのそうべえ」によく似ています。
ひょんなことから死んで地獄行き
エンマ大王のお仕置きをことごとく振り払い
地獄に呆れられ嫌がられて元の世界へ、という流れは同じ。
最近のことなので今回は、
前回の物語と違った点を比べながら読みました。
まず死んだのは3人(前回のは4人)
それぞれ名前は語られていません。(前回は名前あり)
職業は軽業師、山伏、医者。
(1人少ないです、が職業は同じ)
本作ではほかふたりの
死に至る原因がはっきりしています。
軽業師が技に失敗し高いところから落ちると
その真下にいたほかのふたりが巻き添えに。
そして「じごくのそうべえ」では
地獄行きの判定はエンマ大王の気持ち次第でしたが
本作ではちゃんと取り調べがありました。
善行の自己申告を、映像で吟味。
3人とも嘘が判明して地獄お仕置き決定です。
やっぱり現世の行いは
清く正しくしたほうが良いです。
ただ、本作によると
お仕置きをしっかり受けたのちは、
極楽へ行けるみたいなので、
どうぞご安心ください。
著者と絵について…
文章を書いた谷真介さんと
絵を描いた赤坂三好さんは実の兄弟。
この作品は
「行事むかしばなし」(全13巻)の一作です。
表紙絵からもわかるように、
朱色に近い濃い赤が基調となった画風。
版画でしょうか、黒い線が鋭く力強いです。
物語のテーマからはやや離れますが
作品前半と最後に
軽業師の綱渡りを仰ぎ見る群集の場面があり
私はこちらがとても見応えがありました。
小さく密集して描かれた大勢の人々。
全員上を向いて驚きの表情。
そのひとりひとりが細やかに描かれています。
昔話を基にした物語は
複数の著者によって書かれていることが多く
書いた方の個性が表れたり
著者が物語の筋のどこに重点を置くかによっても
内容に違いがあり
読み比べてみるのも面白いと感じました。