「ねっこぼっこ」って何?
「ねっこぼっこ」
(平凡社 2005年4月 初版第1刷)
作 ジビュレ・フォン・オルファ―ス
訳 秦 理絵子
どんな絵本…
原作はドイツで1906年に出版されました。
原題は「ETWAS VON DEN WURZELKINDERN」
日本語に直訳すると
「根(で出来た)子ども からの 何か」
といったところでしょうか。
(wurzel が 根 kindern が 子ども)
タイトルの「ねっこぼっこ」とは?
「ぼっこ」は北海道の方言で
(比較的小さな主に木製の)棒 とあります。
また「ぼこ」を調べてみると
甲州弁で 子ども の意味。
響きに通じるものがある「おぼこ」
東北、仙台弁や津軽弁で 赤ちゃん の意味。
「根っこの棒から生まれた子ども」
の意味と解釈しました。
この訳の由来が気になっていましたが
絶妙の日本語訳だと思います。
この作品は1900年代初頭の
出版当時の時代背景を考慮すると
とても斬新なものだったそうです。
それまで主流は装飾華美な美術様式。
それらとは全く異なる
自然で素朴な、暖かみのある表現。
今なら当たり前のことも
過去には特別な意味を持つ時期があることを
再認識する機会にもなりました。
子どもへの愛情や自然に対する慈しみといった
人間の生活にとって普遍的で大切なものを
飾り立てることなく、素朴な目線で描いたことが
当時の多くの人々の心を捉え
愛され続けて現在に至っています。
どんな物語…
ねっこぼっこの春夏秋冬。
「ねっこぼっこ」は
大きな木の根っこから生まれた子どもたち。
冬のおわり
大きな木の根元の部屋で
大地のおかあさんに声をかけられ
大勢のねっこぼっこが眠りから目覚めます。
丸いお顔におかっぱ頭の無邪気な子どもたち。
地上の春を待つ間
ねっこぼっこは春の準備に大忙しです。
春用の服を縫ったり
地中の虫たちのお手入れをしたり。
そして待ち望んでいた春が来ると
一斉に外の世界へ繰り出します。
色とりどりの服を着て
手には春の小花を携え虫たちも一緒です。
春から夏へと移り変わる地上の森は
美しい緑とさまざまな生き物たちの
輝く命で満ちています。
そのひとつひとつを楽しむねっこぼっこたち。
みんな活き活き興味津々です。
ずっとこのままだといいのに、と言っていた
ねっこぼっこたちですが、静かに秋がやって来ます。
冷たい木枯らしの吹くなか
ねっこぼっこたちは大急ぎで大地の寝床へ。
素朴で細やかなイラストは
決しておおげさにならずに
本当の現実にある美しい自然を
画面の中に優しく切り取って描いています。
見ていると心楽しく穏やかになります。
季節の移ろいと共にある命の営みや
ねっこぼっこの子どもたちのあどけなさに
大切な何かを受け取った気持ちになりました。