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一期一会の本と日常のおはなし

【ひまなこなべ】アイヌのむかしばなし

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先住民族の知恵が詰まった物語

「ひまなこなべ」アイヌのむかしばなし

あすなろ書房 2016年8月30日 初版発行)

文・萱野茂

絵・どいかや

どんな絵本…

アイヌの人たちの「命」(魂)に対する向き合い方や

その「命」をどのように捉えていたかがわかります。

 

どんなものにも「命」(魂)が宿り、

人も生きるためにはその「命」を

いただかなければなりません。

 

アイヌの人たちは魂の宿るすべてのものを

「カムイ」(神さま)だと信じ、

尊敬の心を持って接していました。

この絵本では、その中でも特別な存在「熊」を

熊神として感謝し大切に扱いながら命をいただく

アイヌたちの日常が丁寧に描かれていきます。

 

どんなお話…

このお話は熊として猟師にとらえられた

熊神の一人称で語られていきます。

 

熊神の身体は矢を射られ死んでしまいますが、

小さく姿を変えた熊神の魂は

自分の身体の上にちょこんと乗っかって、

捉えられた熊に感謝するために設けられた

アイヌの宴の様子を見守ります。

 

熊神が捉えられるのは

これが初めてではありませんでした。

前の宴ののち、沢山のお土産を持って

神の国に帰った熊神の魂ですが、

宴でのある光景が忘れられず気になって、

再び森の中に熊となって現れ

同じ猟師に捉えられたのです。

 

その「気になること」と

タイトルでもある「ひまなこなべ」の関係は

絵本を読んでいただき確認してほしいと思います。

ちなみに「ひまなこなべ」は「暇な小鍋」のこと。

 

どいかやさんによる細部まで丁寧に描きこまれた

温かみ溢れるイラストは

 

「命」(魂)をいただくという重いテーマに

どこまでも優しく寄り添ってくれています。

 

最後にどいかやさんによる「あとがき」の一部をご紹介します。

アイヌには、熊送り(イオマンテ)という儀礼があります。

ヒグマ(ほかの動物の場合もあります)の姿を借りて

アイヌの世界にやってきたカムイ(神)を、

ありがたい肉や毛皮をおみやげとしておいていってもらうかわりに、

見送りのうたげをおこない大切にもてなしてから、

神の世界に帰ってもらうというものです。

唄や踊りを見せたり、おもしろい物語(ユカラ)を語って聞かせたりと

これ以上ないほどの心づくしのお礼をすることによって、

神の世界に帰ったカムイたちが

「楽しかったなあ、もっとユカラの続きが聞きたいなあ」と、

またアイヌの世界におみやげをもって訪れてほしいと、アイヌは願うからです。

 

人には人の、熊には熊の

たったひとつしかない

その存在だけが持つ命が備わっていること

そのどの命も敬いながら生きていくこと

アイヌの人たちの暮らしには

大切なことがたくさん詰まっています。