すぐそばにあるものって意外と気がつかない。
「世界でいちばんすばらしいもの」
(BL出版 2015年5月 第1刷)
文 ヴィヴィアン・フレンチ
絵 アンジェラ・バレット
訳 石井睦美
どんなストーリー…
物語のはじまりは
これは、あなたのおばあさんのおばあさんが子どもだったころのお話です。
伝統的で格式ある雰囲気の漂う世界。
建物にも登場人物の衣服や振る舞いにも
優雅さが見て取れます。
とある小さな、けれどとても美しい王国の
王さまとお妃さまには
ルチアと名付けた美しい王女がいました。
ふたりは最愛の王女に
相応しい相手を見つけようと思い立ちました。
王国の賢者アンジェロに
「相応しい婿探し」の方法を尋ねると彼から手紙が。
そこにはこう書かれていました。
「世界でいちばんすばらしいものを
見せることができる若者をおさがしください。」
世界でいちばんすばらしいものとは?
無事に王女の婿は見つかるのでしょうか。
作者について…
作家ヴィヴィアン・フレンチさんはイギリス生まれ。
本書の紹介文によると
「心髄は、伝統的な物語の再話や、
古典文学を独自のおとぎ話に仕立てること」とあります。
この物語も王さまと王妃が娘である王女のために
婿探しをするという古典的な要素が盛り込まれています。
それでいて異国の求婚者のひとりが持参した
「世界でいちばんすばらしいもの」が
ロケット弾だったりと現代的な一面も。
両親が婿探しに熱中している間
ルチアはある若者と街中を見学。
街の素晴らしさを発見しながら
ふたりはどんどん魅かれ合っていきます。
こんなところにも自由で新しい感覚が垣間見られます。
イラストレーターのアンジェラ・バレットさんは
イギリス生まれ。本作の細やかで優美なイラストは
格調高く伝統的でありながら
お伽話の夢のような雰囲気を醸しだしています。
紹介文によると
「本書について『子どもの頃から大好きなお話。
フレンチと話し合い、現代的な素晴らしい
おとぎ話が誕生した』と語っている」とありました。
水路に浮かぶゴンドラや架け橋など
イラストの随所にベネチアを感じる描写が
あることも見どころのひとつです。
みなさんにとって
「世界でいちばんすばらしいもの」はなんですか。
まだ見つかっていない方は
この物語の主人公ルチアのように
自ら行動してみたら探さなくても出会えるかも?