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一期一会の本と日常のおはなし

【ウサギ】今年は兎年ですが…

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この「ウサギ」はちょっと?

「ウサギ」

(2021年1月 初版)

文 ジョン・マーズデン  

絵 ショーン・タン  

訳 岸本佐知子

まず著者について…

文を書いたジョン・マーズデンさんは

1950年メルボルン生まれ。

本書のそでに書かれた作者のコメントを読みました。

そこには、オーストラリアで外来種のウサギが

いたるところに増えていることを発端に

環境問題に対する強い危惧が感じられました。

 

絵を描いたショーン・タンさんは

1974年オーストラリア生まれ。

本書は1998年に描かれた初の絵本作品です。

同そでにある画家のコメントによると

本書の特徴は、時代を越えた普遍性であり

現実の世界に通じる環境や政治や人生などの

課題や問題を考えるきっかけになると語っています。

どんな絵本…

この絵本のなかの「ウサギ」は

高度な文明を持った侵略者として登場します。

 

のどかに暮らしていた先住民の生き物は

「ウサギ」に少し似た姿をしていましたが

大挙して押し寄せ圧倒的な力を持った

「ウサギ」たちにねじ伏せられるように

侵略されてしまいます。

 

その土地は「ウサギ」の思いのままに削られ

造り替えられ、何千万もの「ウサギ」だらけ

「ウサギ」だけの世界になってしまいます。

 

幻想的でありながら

現実的な近未来を想像させる絵です。

冷酷に力を行使する「ウサギ」たちは

とても「ウサギ」とは思えない、思いたくない姿。

まったく可愛げのない「ウサギ」。

 

そしてページをめくるたびに

どんどん無機質に切り替えられる景色

草一本残さないような無慈悲な世界。

 

絵本からは様々な状況での対比がうかがえました。

戦争と平和、文明と自然、

人工と天然、強者と弱者などなどなど。

今ならAIと人間、かも。

 

この絵本から何を読み解くかは読者次第。

原作が発表されてから20年以上経った今でも

読み継がれている理由は

人間に課せられた永遠のテーマが読み取れるから。

再びそでのコメントより…

ショーン・タンさんのコメントの中で

絵本に関する部分が印象に残りましたので

ここに引用します。

…僕は以前から、深い関心を呼びさまし、人の心をゆさぶることのできる絵本というもののもつ力に、大いに興味をもってきました。絵本はあらゆる種類の物語を、あらゆる種類の読者に、あらゆる種類の視点から届けることのできるすばらしいメディアなのです。…

 

それにしても…正直な感想を言えば、

こんな「ウサギ」は嫌だなぁ。

すべてをやり尽くした後に

一体なにが残るのでしょう。