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一期一会の本と日常のおはなし

猫に翼があったなら

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寒いけど、気持ち良い秋晴れ。落ち葉の季節になりました。今日は庭掃除日和です。

「空飛び猫」(講談社 1993年3月第1刷) 著者 アーシュラ・K・ル=グウィン  画家 S.D.シンドラー  訳者 村上春樹

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表紙イラストにひとめぼれ…

4匹の翼の生えた子猫たちのお話し。

美しい毛並み、それぞれ特徴のあるお顔、じっとこちらを見る瞳、そして背中には鳥のような翼が。細密で幻想的なイラストが、いっぺんに空想の世界へいざなってくれました。

 

訳したのは日本を代表する作家、村上春樹。そのあとがきによると、著者のル・グウィンは、

SFファンタジー作家というジャンルに一応入れられている人ですが、とてもうまい綺麗な文章を書く人で、女性の文章家の中では僕がいちばん好きな人のひとりです。でも、彼女は、ここではまるで小さな子供にそっと優しく話しかけるように…(中略)…飾りのないシンプルな言葉で、とても静かに、わかりやすく、文章を書いています。

 

どんなストーリー…

都会のごみ捨て場の周りでお母さん猫に大切に育てられた子猫のセルマ、ロジャー、ジェームズ、ハリエット。巣立ちのときが来た4匹のきょうだい子猫たちは、お母さん猫に促され、翼をはためかせて「成長するのにふさわしい場所」を探して飛び立ちます。

都会の喧騒を離れ、自然豊かな土地へ向かう子猫たちの冒険と困難と出会いが、静かで愛情こもった文章で語られます。

 

物語のはじまりが、なにより素敵です。それは、こんなふうにはじまります。

自分の四匹の子猫たちみんなに、どうして翼がはえているのか、ジェーン・タビーお母さんにはさっぱりわけがわかりませんでした。

 

優しいお母さん猫のもとを離れ、様々な初めての経験をします。

コンクリートの固い地面ではない柔らかな土の感触に驚いたり、

川で魚を取ったり、大きな木のうろを寝床にしたり、

ときには、はしゃぎすぎてフクロウに懲らしめられたり。

 

ときどきお母さん猫の教えてくれたことを思い出しながら、子猫たちは少しずつ成長していきます。物語のおしまいに、4匹の空飛び猫が見つけたものは?

 

 

著者について…

1929年アメリカ合衆国バークレー生まれ。代表作に「闇の左手」や「ゲド戦記」、そのほかにも著書多数。本作「空飛び猫」の続編に「帰ってきた空飛び猫」、「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」、「空を駆けるジェーン、空飛び猫物語」があります。2018年逝去。2021年には彼女を記念した「アーシュラ・K・ル=グウィン文学賞」が設立されました。

 

それにしても、もしも猫に翼があったなら。それは「最強にして無敵」になるってことかな。身近なところに猫がいますが、猫の世界は奥深い。日々つくづく「猫はスゴイ」と思っています。