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一期一会の本と日常のおはなし

【ウェン王子とトラ】母トラの気持ち

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母の愛と哀しみと。

「ウェン王子とトラ」

徳間書店 2007年6月 初版)

作・絵 チェン・ジャンホン  

訳 平岡敦

どんな絵本…

まず迫力のあるイラストが目を引きます。

中国の水墨画を彷彿とさせる力強い筆のタッチが

物語にダイナミックなエネルギーを与えています。

 

遥か昔のどこか

東洋の歴史ある国の雰囲気を感じる絵。

 

29cm四方の大型の絵本に

描かれたイラストは重厚感たっぷり。

巨大な母トラは、画面から飛び出してくるような

勢いと質感があります。

作者によると

この物語は、紀元前十一世紀、中国の殷王朝時代に作られた青銅器をながめていて、思いついたものです。…

とあります。

パリのセルニュスキ美術館に収蔵されている

《雌トラ》と呼ばれる青銅器のイラストには

トラの大きく開いた口のなかに

小さな人間の子どもの頭が収まった格好で

子どもがトラに抱きかかえられています。

どんなストーリー…

深い森の奥に住んでいる母トラは

昔、人間の猟師に子トラを殺されて以来

人間が憎くてたまりません。

 

怒りに満ち溢れた母トラは

ついに村人を襲うようになりました。

 

トラを退治しようとしたその国の王が

トラ狩りの成否を占い師の老婆に尋ねると

トラの怒りを鎮める方法はただひとつ

王の大切な息子ウェン王子を

母トラに差し出すことだ、と告げられます。

 

占いを信じた王は、悲嘆にくれながらも

ウェン王子を森の中、母トラの元へ。

憎しみに満ちていた母トラでしたが

小さく無邪気なウェン王子を前に

かつての子トラへの愛情を蘇らせ…

 

母トラの哀しくもあり、強くもあり、そして

何よりも温かい母親の愛情が胸を打ち

 

ウェン王子の人に対しても動物に対しても

変わらない尊敬と優しさに勇気づけられる物語です。

作者について…

チェン・ジャンホンさんは

1963年中国・天津生まれの画家、絵本作家。

北京の美術学校に学び、1987年パリに移住。

ほかに絵本作品は「この世でいちばんすばらしい馬」

「小さなサンと天の竜」「ニマと おにばば」など。

 

こちらは、墨と油彩を使った画家の

近年の創作活動を映した動画です。

www.youtube.com