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一期一会の本と日常のおはなし

【いぬ】ショーン・タンさんの絵本

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いつも近くに。

「いぬ」(DOG)

河出書房新社 2022年7月 初版) 

著者 ショーン・タン 

訳者 岸本佐知子

まず著者について

著者のショーン・タンさんの名前を

世界に知らしめたのは

2006年に発表された絵本「アライバル」。

この作品は全く文字のない、絵のみの絵本。

アングレーム国際漫画祭最優秀作品賞を受賞。

その後「ロスト・シング」や

「遠い町から来た話」など数々の作品を発表し、

多数の賞を受賞している方です。

どんな絵本…

伴侶動物」という言葉をご存じですか。

 

私がこの言葉を初めて知ったのは

動物病院に入院している愛犬を見舞った治療室で

獣医さん用の専門書の背表紙に書かれていた文字を

見たときでした。

もう十年以上前のことですが、その瞬間

愛犬に対する私の気持ちにこんなにぴったりの

言葉は他にないと思ったものでした。

この絵本の読後、ふと思い浮かんだ記憶です。

 

この絵本のテーマは「犬と人間の関係」

著者のあとがきを読むと

著者は犬に格別の親しみをもっている

ことがわかります。

どんなストーリー…

はじめ犬と人間は全く接点のない他者でしたが

ある時ふとしたことから

大きな川の対岸で向き合い、そして

お互いを認め信頼し共に歩む存在となります。

それは一万五千年前のこと。

 

しかし時の流れと共に

その関係はいろいろな形に移り変わります。

落ち着いた色合いの絵は

独特の寂寥感を湛えてその関係性を描きます。

 

その場面構成はとてもシンプル。

数ページに渡って続くのは

場所も犬も人間も別物ですが、すべて

大きな隔たりを挟んだ両端に

お互いに背を向けて立つ犬と人間がいる構図。

 

いろいろな犬と

いろいろな人間が

いろいろな場所で背を向け合い

年月が流れていきました。

 

読者はなにも言葉が書かれていないその絵から

なにかを読み取るために、立ち止まり

じっくり細部までみることを求められます。

 

私は背を向けた犬と人間の絵に

こんなことを感じました。

「人間はそのときどきで犬に対する扱いを変え

狩猟や戦闘の道具としたこともあれば

存在を気にかけることもなっかった時期もあった」と。

 

そして終盤、絵は

ある時またふとしたことから

犬と人間がそれぞれに振り返り

お互いを認め合ったシーンを描いて幕を閉じます。

 

人間の心がどう移り変わっても

犬の人間に対する気持ちは同じでした。

そして今また人間はそのことに気づき

再び共に歩む道を見つけたのでした。

どんなに月日が流れ世界が変わっても

犬と人間の絆は強く

たとえどんな困難にあっても

犬の献身的な人間を思う気持ちは変わらず

その気持ちが人間を未来へ導くだろう

著者は伝えています。

 

同感です。

私の愛犬も暗闇を照らす光のように

いつも明るく私に寄り添ってくれました。

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