そっと拾って。
「みて、ほんだよ!」
(光村教育図書 2012年11月 第1刷)
文 リビー・グリーソン
絵 フレヤ・ブラックウッド
訳 谷川俊太郎
どんな絵本…
谷川俊太郎さんが訳した本文は
とても短い文字数です。
全部数えても、ほんの100文字あまり。
その短くて少ない言葉で
本の持つ素晴らしさや希望を表しています。
表紙絵の少年と少女が住むのは
スケッチ画のようなタッチの筆致で描かれる
現実と空想が入り混じった不思議な町です。
言葉で語られていない多くの部分を
イラストが情緒豊かに物語っています。
どんなストーリー…
つぶれたペットボトルや
割れたガラス瓶が道端に落ちている
決して豊かとは見えない町の一角に
傾いた木の柵で囲まれた一軒の家。
薄い水色の柄入りワンピースを着た
白髪のおばあさんがその家に向かっています。
赤い首輪をした大きな茶色い犬を連れて
大きなショッピングカートを押し
よく見るとその足は裸足。
おばあさんの右腕に下げた白い買い物袋から
赤い表紙の一冊の本が
今にも落ちそうにはみだしています。
ちょうど家を囲む木の柵の入口手前で
その本を落としてしまったことに
おばあさんは気がついていません。
道端に開かれたかっこうで落ちた赤い本。
そこに少年と少女が歩いてきました。
どちらも5,6才でしょうか。
少年は白いTシャツに薄青の半ズボン
少女はライムグリーン地に小さな白のドット柄の
ノースリーブのワンピース姿。
ふたりもよく見ると裸足です。
「みて、ほんだよ!」
驚いたように微笑むように
落ちている赤い本を見つめるふたり。
すぐに嬉しそうに本を抱えたふたりは
ときにバラックの上で
ときに電柱が林のようにひしめく下で
さらにはトタン板でこしらえた帆舟に乗って
本をながめたり
風に飛ばされた本を追いかけたり
その町並みは
大きな川に人が乗れるほど大きな
コーヒーカップが浮かんでいたり
巨大な空き缶や牛乳パックの空箱が
ビルのようにそびえていたり
捨てられたごみを集めて作られたような
空想の世界が広がります。
少年と少女は雨の中も風の中も
赤い本を大切に抱えて
落とし主のおばあさんに届けました。
すると、おばあさんとふたり
そこにほかの子どもたちも集まって
赤い本を囲みます。いざ本の世界へ。
この絵本は教えてくれました。
いつでもどこでも
本を読めば、どこまでも
どこかへ私たちを連れて行ってくれる
「なんどでも」