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一期一会の本と日常のおはなし

【すきっていわなきゃだめ?】作者は辻村深月さん

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だめじゃない、と思うけど。

「すきっていわなきゃだめ?」

岩崎書店 2019年5月 第1刷) 

作 辻村深月  

絵 今日マチ子  

編 瀧井朝世

どんな絵本…

人気小説「かがみの孤城」の作者である

辻村深月さんの初めての絵本です。

 

本作で、思春期の揺れ動く感情を

的確で細やかに表現する文章を読んで

次は「かがみの孤城」も読んでみたいと

思いました。

 

さてこの絵本のイラストは

最後の1ページを除いて

ずっと主人公の目線の先の光景を描いています。

 

主人公が絵のなかにはっきりと登場することは

おしまいまでありませんでした。

そのことが、この作品のテーマの核心の部分と

繋がっています。

 

登場するのは小学校の5,6年生くらいの子たち。

物語のはじまりの一文は

すきな ひとに「すき」って いうのが

はやってる。

 

絵本の全体を通して、ひらがなを使った

誰にでも伝わる平易な言葉で

「すき」とはどんな気持ちなのか

その喜怒哀楽を繊細に表現しています。

 

表紙絵のカッコいい男の子「こうくん」が

主人公が目で追って

胸が苦しくなったりうれしくなったりする相手。

主人公が「告白の流行」に乗れないのには

なにか理由がありそうです。

この絵本の魅力は…

「すき」とはどんな気持ちなのかを

丁寧に優しく読者に伝え

「すき」だけど言えない悩みに

そっと寄り添うことで

今まさに恋をしている人たちを

温かく力づけてくれる絵本です。

 

本作は「瀧井朝世 編 恋の絵本」

シリーズ全5巻の一作。

このシリーズは

現代を代表する5名の作家さんによる

いろいろな形の「恋」を応援してくれる

シリーズとなっています。

表題の「すきっていわなきゃだめ?」

という主人公の言葉には

「すきっていいたい」けど

いろいろ考えると「いえない」

という気持ちが込められているように感じました。

 

「いわなきゃだめ」じゃないけれど

「いってもいい」し「いわなくてもいい」けれど

 

それを決めるのは誰でもない自分自身であり

その結果がどうであっても

そのときの自分の気持ちを大切にしてほしい

そんなことを思いました。