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一期一会の本と日常のおはなし

【PIHOTEK】北極を風と歩く

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イヌイットとはカナダ極北地域で生活を営む人々。

「PIHOTEK」ピヒュッティ 

北極を風と歩く 

講談社 2022年8月 第1刷)

文 荻田康永  絵 井上奈奈

どんな絵本…

北極に行ったことはありますか。

もしくは、これから行く予定は?

私はどちらもなしです。

でも作者のあとがきの言葉を借りれば

いつか行けるのかも知れません。

 

本書は

20年以上前からこれまでに17回の北極行を経験した

北極冒険家の萩田康永さんの作品です。

 

短く簡潔な文で作者が実際に肌で感じた北極を表現。

 

ひとりソリを引きながら

真白で広大な北極を歩く男が出会うのは

雪、風、ホッキョクグマ、寒さ、命、夜明け…

広大で美しくも厳しい自然のなかで

作者は地球の全ての命について思いを巡らせます。

 

画家の井上奈奈さんは16歳で単身アメリカへ留学し

美術を学んだ方。

本書の絵では、白銀色の絵の具が要所要所に使用され

北極の風景や生き物が清らかな輝きを放って描かれています。

 

北極、そこにある全ての命は

何の迷いも余念もなく、その極寒の地で

各々に与えられた命を生きていると感じました。

作者のあとがきより…

表題の「PIHOTEKピヒュッティとは

北極圏に住むイヌイットの友人のひとりが

作者につけてくれた名前。

その意味は英語にするとスノーウォーカー

雪の中を歩いて旅する男」。

 

あとがきの中に強く印象に残る文章が

ありましたので抜粋して記します。

…その意味では、地球に生きる我々すべてが、地球自体であるということだ。地球全体の物質の総量は、長年にわたってほとんど変化がない。地球という、宇宙に対して閉じられた空間内部で、常に生まれ変わり死に変わりしながら、誰かを構成していた物質が次の誰かを構成する物質となる。いま私の体を作っているアミノ酸やカルシウムは、過去のいつかにおいてはホッキョクグマだったかもしれないし、ミミズだったかもしれないし、人間だったかもしれない。いまの私はいまの私単体として存在しているのではない。すべての命も存在も関係性の中に生まれ、死んでいき、また生を形づくる。…

この部分を読んでいるうちに

いつか私も北極の風のなかに

眼には見えないほど小さくなって

もしくは向かい風を楽しむ渡り鳥となり

舞っているかもしれないと思うに至りました。