昨日はあちこちで、一昨日夜の皆既月食の話題で持ち切りでした。綺麗と言う人も、不気味と言う人も。感じ方はそれぞれですね。
「どんぐりちゃん」(星の環会 2012年3月第1刷) 文 アン・ドヒョン 絵 イ・ヘリ 訳 ゲ・イル
どんなお話し…
ナラガシワの木の下のどんぐり拾い。みなさんは経験ありますか。
本書には作者の幼いころの豊かな自然のなかでの体験が、物語に活かされています。
子どもの頃の経験が、いかに大切かを感じます。
作者は、小さなどんぐりや、枝から舞い降りた落ち葉にまで、命を感じているからです。
本書の原題は「関係」。
命はめぐる、読み終えたとき、そんな言葉がまっさきに思い浮かびました。
物語は、先に散った落ち葉のうえにひとつの「どんぐりちゃん」が落ちてくるところからはじまります。
そのどんぐりちゃんを、砕けて腐る瞬間まで、自分の行く末を嘆くことなく、希望を胸にひたすら守り続ける落ち葉たち。
小さなどんぐりちゃんの手が、まっすぐに空に向かって伸びる時、私たちもそこに希望を見ることになります。
誰の目にも触れないような存在、普段の目線であれば気がつきもしない事柄に思いを寄せた素敵な物語です。視点を変えてみれば、それまでとは全く別の世界が見えてくることを教えてくれました。
こんなにも命は温かく懸命であるということ
見方を変えれば、私たちの周りは命に溢れているということ
私たち人間もまた、ほかの命に支えられている存在であること
優しく心に響く文章と細やかな線画でたおやかに描かれたイラストです。
どんぐりちゃんの無垢な心と表情、落ち葉たちの包み込むような愛情を注ぐ目線と優しいことば、文章と絵がお互い支え合っているような印象を受けました。読み聞かせにも。
作者と画家について…
こちらは、韓国の作家・画家の描いた絵本です。
作者は、1961年慶北のイェチョン生まれ。詩や童話で数々の文学賞を受賞している、韓国を代表する叙情詩人。検索したプロフィールには「私的なことを素材とするだけでなく、韓国社会の現実を繊細に描き出す詩人としても評価されている。」とあります。
画家は、1961年ソウル生まれ。大学で視覚デザインを学び、子どもの表情をうまく表現した個性ある絵を描いている。文・絵を書いた絵本に「あめがふるひに…」、韓国で親しまれている絵本「わたしたちのからだの穴」では絵を描いています。
本書の作者のあとがきの言葉(一部抜粋)をどうぞ。
…どんぐり一個の中には幼いナラガシワが一本ずつ入っているということ。その言葉の意味を本を読んでじっくり考えてみてください。…
とても当たり前のことなのですが、普段どれだけ意識していることでしょう。本書を読んだことを機会に「関係」について考えようと思います。