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一期一会の本と日常のおはなし

【幼い子は微笑む】長田弘さん詩の絵本

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モナリザは幸福じゃなかったの?

「幼い子は微笑む」

講談社 2016年2月 第1刷) 

詩 長田弘  

絵 いせひでこ

どんな絵本…

長田弘さんの名詩に

いせひでこさんが美しいイラストを添えました。

 

「ことば」を覚える前の幼い子が微笑む

その短いひとときだけに

本当の幸福があると詩人は詠っています。

 

「微笑」がなんであるのかを詩人が詠んだ

この詩の中の1節を抜粋します。

そして、幼い子は微笑んだ。

この世で人が最初に覚える

ことばではないことばが、微笑だ。

人を人たらしめる、古い古い原初のことば。

 

詩人は「ことば」を覚えた瞬間から幸福を失い

覚えた「ことば」と同じだけ

悲しみを知ることになるとも詠っています。

 

この詩は、幼い子のそのほんのひとときの

幸福な時間への讃歌であり

さらには、それだけにとどまらず

その幸福な時間を手放した後の

大人への問いも投げかけて

締めくくられています。

 

淡く、光を湛えた柔らかな色合いの水彩画

幼い子とその幼い子を包む自然のイラストに

純粋で無垢な魂のきらめきを感じました。

読み終えた感想は…

さて、私はそんな風に微笑みのことを

考えたことが全くなかった。

 

改めて考えてみると

確かに幸福だから微笑むのではなく

「笑う門には福来る」

幸福になるために微笑んでいるのかもしれません。

 

ですが、何も知らない幼い子でなければ

(いわば無垢でなければということでしょうか)

微笑むことができない(本当の幸福はない)

とは思いません。

 

この絵本のなかに

ハクモクレンの花に抱かれた

眠る幼い子のけがれなき美しさを描いた

イラストがあるのですが

泥の中から咲く蓮の花の美しさも

私は本物だと思います。

 

悲しみを知ったからこそ

得られる微笑みも必ずあります。

 

ところで

モナリザは幸福ではなかったのでしょうか。

それはレオナルドダヴィンチさんに

聞いてみないとわかりませんが

あの絵を間近に見た瞬間

大人になり「ことば」も覚えていましたが

私は言葉を失い幸福に満たされました。