hon de honwaka

一期一会の本と日常のおはなし

【白バラはどこに】甘さのみじんもない絵本

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厳しいけれど見てほしいと思います。

詩人が贈る絵本「白バラはどこに」

みすず書房 2000年9月 発行)

作 クリストフ・ガラーツ&ロベルト・イーノセンティ  

絵 ロベルト・イーノセンティ  

訳 長田弘

どんな絵本…

表紙見開きの紹介文には

…甘さのみじんもない、しかし、

リリカルな本当の"絵本"が、ここにある…

と書かれています。

 

また作者を紹介する文には

…今日『あらゆる世代にとっての

もっとも新しい古典』と目されている」とも。

この絵本は

戦争の無残さを

はげしい言葉はひとつも使わずに

言い表した作品です。

どんなストーリー…

第2次世界大戦下のドイツの小さな町に

白バラ」という名前の少女がいました

少女の町にも確実に戦争が訪れ

徐々に暗い影を落としていきます。

 

そんな日々が

はじめは少女の目線で語られていきます。

ある日逃げ出そうとした少年が捉えられ

トラックに連れ戻されて再び走り去るのを

目撃した「白バラ」、そのあとを追います。

 

森の奥深くに入った「白バラ」が見つけたのは

電流の流れる鉄条網の先にいる

何人もの痩せた子どもたちでした…

物語の途中から、語り手が

少女の一人称から

三者の目線へ切り替わります。

 

おそらく、読者の誰もが望まない結末へと

物語は向かっていきます。

絵は写実的で、

当時の様子を少し離れたところから描いた

モノクローム写真のような感じです。

 

その絵に明るい色は一切なく

町を行きかう人びとやトラックに乗る兵士たち

その顔に笑顔はひとつもない

 

「白バラ」の表情もどんどん青白くなって

町も空も何もかにもが暗く寒々しいく

過酷な戦争下の様子がうかがえます。

作品の背景について…

タイトルにある「白バラ」は

ナチ・ドイツ時代の1942年

ミュンヘン大学生だったショル兄妹

(翌年、逮捕され、処刑された)がつくった

反ナチ・ドイツ人の小さな抵抗グループの

地下パンフレット「白バラ通信」の名によります。

どんな善も真心も、無情に飲み込んでしまう戦争

本当に「甘さのみじんもない」作品だと思います。

 

前述した見開きの紹介文には続きがあります

…『白バラ』という名の少女の記憶を

とどめてほしい。

この絵本を読んだら、あなたの心のなかに。


今すべての人たちに読んでいただきたい一冊です。