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一期一会の本と日常のおはなし

【はいたかのふゆ】版画集のような絵本

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強く美しい野生の生きものたち。

「はいたかのふゆ」

極寒に生きる生きものたち

(2002年1月 初版第1刷) 

作・絵 手島圭三郎

どんな物語…

厳しくも美しい極寒の地で

獲物を狙うハイタカを主人公に

生きものたちの

命を懸けた生きる姿が描かれています。

 

真冬に赤い実をつけた木々や

すっかり葉の落ちた太くまっすぐにのびた木

雪を降り積もらせた針葉樹の森で

遠い国からやってきた渡り鳥の小鳥たち

それを狙うハイタカですが

小鳥は簡単には捕まりません。

 

疲れたハイタカが次に出会うのは

カラスの群れ。

ヒナを狙うハイタカはカラスの天敵

カラスたちはハイタカに襲い掛かります。

 

森の外れに追われたハイタカが再び森に舞い戻ると…

私たち生きものは

生きものの命をいただかなければ生きていけません。

それが特別なことではなく

ごく当たり前のことなのだというように

文章は生きものたちの営みを

淡々と伝えてくれています。

どんな絵…

この作品は版画で描かれています。

 

一頁一頁めくるごとに繰り広げられる

生きものたち営みは厳かで美しい。

 

極寒の地に生きる生きものたちが

青みがかった灰色の背景に

黒い線とわずかな色味で見事に表現されています。

 

鋭い目で大きな翼をいっぱいに広げて

雪降る森を背に飛ぶハイタカからは

日々命と真っ直ぐに向き合う力強さを感じます。

 

その孤高の姿に

見ているこちらも

背筋が真っ直ぐ伸びるような気がしました。

作者のプロフィール…

作者の手島圭三郎さんは

1935年北海道紋別市生まれの版画家・絵本作家。

父親の転勤で、主にオホーツク海沿いの農漁村を転々として育ちました。

大学を卒業後20年にわたって中学校教師を務めた後に木版画家として独立。

「きたきつねのゆめ」でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞、ニューヨークタイムズ選世界の絵本ベストテン

「しまふくろうのみずうみ」で絵本にっぽん賞など、数々の賞を受賞しています。

 

版画での制作は一作品に一年を要するそうです。

作者は、2021年に40作目の作品となる

「きたきつねとはるのいのち」を刊行し引退されました。

 

野生に生きるハイタカの姿が潔く何度も見返した作品。

まだご覧になっていない動物好き鳥好きの方、一見の価値ありです。

 

ただ、現在本書はネットで入手困難なようです。

いつか読んでみたい他の作品を掲載します。