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一期一会の本と日常のおはなし

【茨海小学校(ばらうみしょうがっこう)】宮沢賢治さんの絵本

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近くの野原の奥にもあるかも。

「茨海小学校」(ばらうみしょうがっこう)

(miki HOUSE  2022年10月 初版第1刷) 

作 宮沢賢治  

絵 西村繁男

はじめに…

あとがきによる 「本文について」

本書は『宮沢賢治コレクション4 雁の童子』(筑摩書房)を底本としました。

なお原文の旧字・旧仮名、および送り仮名に関しては、原則として現代の表記を使用しています。

現在ではあまり使われなくなった

言い回しや読み方が含まれていますが

宮沢賢治さんの特徴と捉えられているもの

(例えば「誰」を「たれ」と読む)に関しては

当時のままになっています。

 

また本文に出てくる言葉で

今は一般的に使用されていないもの

(例えば長さの単位「三十里」や「七尺」・

「十二間」のようなについてなど)

の説明もあとがきに記されています。

どんなお話…

茨海小学校は狐の子どもたちの小学校です。

表紙絵のように

チョッキにズボンを履いた子もいれば

チョッキだけの子もいます。

みんな明るく元気いっぱいな狐の子たちです。

もちろん

小学校の先生たちもみんな狐

服装も毛並みも個性豊かな先生たちです。

 

茨海の野原を探し物をしながら歩いていた

人間の「私」

偶然その「茨海小学校」にたどり着き

授業参観する物語。

 

こう書くと可愛らしい

楽しいお話のようにも思えますが

宮沢賢治さんの文章は

そうでありながらどこか謎めいて

何か別のものが隠れているような

雰囲気を持っています。

 

語られる言葉の調子

表現するために選ばれた言葉

独特の世界を創り出しています。

 

西村繁男さんの絵

緑豊かな野原のなかの小学校の

個性豊かな狐の先生の格好や

やんちゃで元気な狐の生徒たちの表情や仕草を

明るい色合いの素朴な線で描いています。

読んだ感想…

絵本で読む宮沢賢治さんの作品は2作目です。

tokinoakari.hatenablog.com

今回の作品で私は

「宮沢ワールド」といわれる所以を

垣間見たような気がしました。

さりげなくあどけなく描かれている物語のなかに

独特の雰囲気や作者の価値観を感じました。

 

"食べる者であり一方食べられる者でもある"

茨海狐小学校の生徒たちは

それを当たり前のこととして学んでいます。

 

どの生きものにも両面があることを示されて

可愛い狐たちの茨海小学校の授業参観を

私も心の奥底でぞわぞわする何か

感じながら聞きました。

 

授業参観を終えて

大急ぎで走ってそこから立ち去った人間の「私」

 

物語はその「私」の授業参観の短い感想で

締めくくられているのですが

すべては各々読者にゆだねられているようで

この感想がまた好いな~と思いました。