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一期一会の本と日常のおはなし

【海のいのち】立松和平さんの絵本

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海は心のふるさとです。

「海のいのち」

えほんはともだち25 

立松和平伊勢英子 心と感動の絵本 2〉 

ポプラ社 1992年12月 第1刷) 

作・立松和平  

絵・伊勢英子

きっかけは…

こちらの絵本は、私が読者になっている方の

ブログで紹介されていた作品です。

このブロガーさんは長年教育に携わっている方で

実際に経験した子どもたちとのやり取りから感じたことや

子どもたちへの応援のメッセージが

愛情深く書かれています。

私にとっては

現場からの生の声を聞くことができる新鮮さがあり

毎回何が書かれているか楽しみなブログです。

 

この作品は小学6年生向けの教材になっているそう。

どんな物語なんでしょうか、興味津々。

どんなストーリー…

海沿いに住む主人公の少年太一

海が大好きで尊敬する父と同じ猟師になろうと

子どものころから決めていました。

 

その気持ちは海で父を失ってからも変わることなく

中学を卒業すると漁師の与吉爺さに弟子入りします。

 

何年もの月日が経ち

太一は与吉爺さから「村一番の漁師」だと

言われるぐらい屈強な若者となりました。

そして

父が死んだあたりの瀬にもぐることになります。

ある日、ついに太一は父と同じ状況に遭遇して

物語に寄り添う絵には

光り輝く海も

夕日に染まる海も

真っ暗ですべてを飲み込んでしまう海も

いろいろな表情を持つ海のすがたが描かれています。

感想を…

私が小学6年生のときにこの作品を読んだら

どう思っただろう。

海は怖いと思ったかな。

この作品にはいのち

それは言い換えれば死というものについて

書かれているので、子どもの私には

怖さが先立ったのではないだろうか。

大人の私の感想は

子どものときとはだいぶ違ったものになりました。

 

一生のあいだには

どうにもならない哀しみが伴う出来事があり

その最たるものは大切な命との別れかと思います

 

太一の心にもきっと父の死はずっとありつづけ

さらに太一には

なぜ、なぜ父はそこで死んだのか

という思いもずっとあったのではないか。

 

物語を最後まで読んで感じたことは

太一は海から逃げずに

海のいのちと向き合いつづけることで

少しずつ成長し

心の土台をしっかりさせたことで

父の死についても自分なりに納得できる答えを

見つけられたのではなかと思いました。

 

師となった与吉爺さの影響も大きい。

千匹に一匹でいいんだ。

という自然に対する謙虚さ。

父の死と対比するように描かれた穏やかなその死。

 

与吉爺さの生き様に触れた日々は

太一の心を育み

父と同じ状況に遭遇した太一が

父とは違った選択をする強い支えとなったと思います。

 

ところでこの作品で私が一番

よかったなぁと思ったのは

最後のエピローグ的な一文でした。

母はおだやかでみちたりた、

美しいおばあさんになった。

 

現在の私としては、太一のお母さんが

夫の死以上に悲しみを背負うことなく

しあわせな人生を送ることができて

本当によかったと思った次第です。

 

読み手側の心の在りようで

海のように様々な表情を見せる作品だと思います。