こんな病院があったら便利?!
「北守将軍と三人兄弟の医者」
2021年10月 初版)
作 宮沢賢治
絵 スズキコージ
どんな絵本…
宮沢賢治さん作の本書は、
(筑摩書房)を底本としています。
原則として原文の旧字・旧仮名等は現代の表記を使用し
文中の句読点は原文に従ったものです。
独特のリズム感のある文章で
音読するとラップになりそうな感じ。
(ラップあんまり知らないけど)
読み進めると
細部まで細やかに写し出される文章から
宮沢賢治さんの創作した町や人物たちは
もうひとつの地球に実際存在している気がしてきました。
スズキコージさんの絵の
自由で勢いのある筆づかいと
異国情緒を感じさせる色合いは
昔どこかにあったような存在感があります。
どんなお話し…
ラユーという首都に三人兄弟の医者がいました。
一番上のリンパ―は、普通の人の医者
次の弟のリンプーは、動物の医者
末の弟のリンポーは、草や木の医者
黄色い崖のうえには三人並んで建てた病院。
ある日そのラユーの町に
9万の兵士たちを引き連れた
北守将軍ソンバーユ―が
30年ぶりに帰ってきます。
どんな日も馬上で戦い続けたソンバーユーは
馬から降りようとしますが降りられません。
両足が馬の鞍にしっかりくっつき、
その鞍も馬の背中にがっしりとくっついて
どうすることもできないのです。
しかもその全身に、
灰色をした不思議なものが生えています。
困った将軍が町人に名医は誰かと訪ねると
坂の上のリンパ―先生の病院を示されて…
将軍がどうなったかは、本書を読んでのお楽しみに。
読んだ感想は…
底本となった作品は読んでいないのですが、
この方でしか言い表すことができないと
思える表現で綴られる宮沢賢治さんの文章と
その文章の世界観を
この方でしか描けないと思える描写の
スズキコージさんの絵が、
鮮やかに融合した絵本だと思いました。
開いた途端に目に飛び込んでくる
独特の迫力のある絵が
宮沢賢治さんのたたみかけるような言葉遣いと
摩訶不思議でありながらどこか親しみのある物語に
絶妙に合わさってひとつになった感じです。
それにしても、宮沢賢治さんの初期の作品では
「ラユー」は「グレッシャム」
「リンパ―」は「ホトランカン」
「リンプー」は「サラバアユウ」
「リンポー」は「ペンクラアネイ」という名前。
このネーミングセンス
どこからどうやって思いつくのか
お聞きしてみたいものです。
あ、ちなみに将軍の初期の名前は
「プランペラポラン」(面白い!)
「ソンバーユー」という名前は
馬油で作られた
「尊馬油(ソンバーユ)」という塗り薬の名前から
きていると思われるそうです。
これだけは、なるほどやっぱり、でした。