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一期一会の本と日常のおはなし

【ナムチンカラトラヤ―ヤーねことおしょうさま】松谷みよ子の子どもに伝えたい日本昔話

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こんなお経あったかな?

「ナムチンカラトラヤ―ヤ― ~ねことおしょうさま~」

小学館 2001年4月 初版) 

監修・文・松谷みよ子  

絵・諸橋精光

日本の昔話を…

松谷みよ子の子どもに伝えたい日本昔話シリーズから

この絵本は全編ひらがな・縦書きです。

どんなお話し…

 

むかし、あるやまの やぶれでらに、

いねむりのすきな おしょうさまが、

ねこのトラと くらしておった。

 チーン、ナムナム

おしょうさまが おきょうを あげると、

ねこも おきょうを よんだ。

 チーン、ナムナム ニャグニャグ

 チーン、ナムナム ニャグニャグ

こんなふうにお話しははじまります。

 

居眠りしている和尚様の膝の上で眠るトラ

和尚様と一緒にお経をあげるトラ

 

のどかでのんびりした光景からはじまります。

よく見るとそのお寺は今にも壊れそうな簡素な作り。

   

月夜のある日、お寺の境内に立つお堂のなかで

たくさんの猫たちが集まって静かに

袈裟をつけたトラのお経に聞き入っていました。

 

みんな しっぽを あしにのせ、かしこまっておった。

 

猫たちみんな真剣な面持ち。厳かな場面です。

分厚く色を重ね塗りした筆づかいの絵は

物語に存在感を与えています。

 

外から見ていた和尚様がトラのお経をほめると

トラはそれきりいなくなってしまいました。

 

しばらくしたある夜、トラが和尚様の夢に現れて告げます。

 近いうちに長者様のお屋敷のお葬式があること

 お葬式の行列が担いだお棺に「あること」が起こるので

 お経をあげて自分の名前を呼ぶように

 

すると間もなく長者様のお婆さんが亡くなり

お棺を担いだお葬式の長い行列ができました。

その行列が野原にさしかかったときです。

夢に出てきたトラが言った通りのことが起こります…

この昔話の魅力は…

 

この昔話は、ねこの恩返し?

 

急にいなくなったトラが

ぼろぼろのお寺に住む和尚様のために

猫の念力を使って

立派なお寺に住めるようにしてくれたのでしょうか。

 

そして、この昔話のもうひとつの見どころは、

現在とは全く違う、昔のお葬式の様子です。

 

昔は車のありませんから

お棺は参列者が歩いて運ぶことになります。

 

物語の中の絵を見ると

裕福な長者様のお葬式は

参列する大勢の人たちで長い長い行列。

 

行列の先頭は提灯や白い飾りを長い竹の先につけて持った人たち

次に続くのは立派な袈裟を着た大勢の和尚様

そのあとにお棺を担ぐ白装束の人々

そのお棺は御神輿のような立派なものです。

 

そのうしろに喪主の長者様親戚やご近所さんの長い列。

今とは違った、でも昔本当にあったお葬式です。

さて、先に猫の恩返しか?と書きましたが

思うに、きっとそうではなくて

トラは同じお昼寝仲間として

和尚様が大好きだったんですよね。

それで、ちょっといいことをしたくなったのかも。

 

この絵本の編集部から〈おうちの方へ〉のメッセージには

いつの時代にも色あせることなくわくわくドキドキさせてくれる「昔話」。昔話は、日本に伝わるすばらしい伝承文化です。そんな日本の昔話を、二十一世紀を担う子どもたちに伝えたいと、私たちは考えています。想像力豊かな子どもを育てるために、お子さまと一緒にお話しの世界にはばたいてみませんか。

とあります。

 

今は失われた昔の日本の姿を

垣間見られるのも昔話の良いところです。

 

ところでこの昔話のタイトルは一体?

と思った方もいたのでは。

私もそのひとりです。

物語を読み終わると、それもすっきり解決。

こんな信頼と愛のこもったお経なら

こんな奇跡も起きそうと感じました。