冬のスポーツといえば、スキーやスノーボード。もう何十年と行っていませんが、山頂の澄んだ空気感は今もはっきりと覚えています。
「オーロラの雪」(猫の言葉社 2013年1月 初版) 文 リーッタ・ヤロネン 絵 クリスティーナ・ロウヒ 訳 稲垣美晴
どんな絵本…
実はこの絵本を読もうと思ったきっかけは、出版社の名前「猫の言葉社」。私は今回初めて知りました。ステキなネーミング。由来は?後でこちらも調べてみたい。
まず絵に心を惹きつけられました。
綿菓子に色を付けてコラージュしたかのような、やわらかなタッチと色合い。
とても寒い土地や風景が舞台ですが、温かく包み込まれる気持ちになる絵です。
どんなストーリー…
赤いアノラックと赤いスキーズボンに、猫耳のついたベージュのニット帽をかぶった少女サリが主人公。
サリは最近この辺りに引っ越してきたばかりのようです。
今日は前にお母さんと通った山道を、ひとりでスキーで回ります。
除雪車が通った雪道を降り、線路の近くから、湖に、森に、洞窟に、
あるときは思い出をたどりながら。
あるときは自分の息づかいと何かの物音を感じながら。
この絵本は、クリスマスの前の日、サリという女の子が、ひとり静かに自分と向き合う物語です。
サリの引っ越しは、ある悲しい出来事によります。
けれどサリはそれを嘆いているのではありません。
静かに大地に触れ自然に抱かれながらサリが思う言葉に、新たな決意を感じました。
帰り道、サリが野生のもみの木にステキなプレゼントを贈ります。
そのお返しでしょうか、サリにも大自然の美しい贈り物が…
凍てつく冬はこんなにも美しいと感じることのできる物語。
サリという大人でも子どもでもない、ひとりの少女の美しい心に触れてみませんか。
著者について…
文:リーッタ・ヤロネンさんは1954年フィンランド生まれの作家。新聞記者を経て、1990年より作家活動に専念する。いくつもの文学賞を受賞し、絵本「木の音をきく」は、フィンランディア・ジュニア賞を受賞、各国で翻訳されています。本書はその続編にあたる作品です。
絵:クリスティーナ・ロウヒさんは、フィンランドの人気絵本作家、イラストレーター。表現力に定評があり、フィンランドで「最も美しい絵本」に二回選ばれています。「木の音をきく」3部作の絵の芸術性は特に高く評価されています。
猫の言葉社について…
HPがありました。それによると猫の言葉社は、「フィンランドの文化を日本の皆様に伝える出版社として、2008年4月にスタートしました」。
代表は本書の訳者でもある稲垣美晴さんです。著書に「フィンランド語は猫の言葉」というエッセイがあります。