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一期一会の本と日常のおはなし

ドミニカ共和国作家の絵本

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昨夜しとしとと降っていた雨が今朝はすっきりと上がり、朝露が陽射しをうけてきらめいていました。

「鳥たちの木」(蝸牛社 1984年12月 第1刷) 文・絵 カンディド・ビド 訳 山本真梨子

 

ドミニカ共和国について…

この絵本は、以前記事にしたことのある野間児童絵本原画コンクールの入選作です。

 

ドミニカ共和国、どこにあるんだろう。もちろん聞いたことはあるのですが、勉強不足で国名と場所が一致しません。

ドミニカ共和国は、カリブ海に浮かぶ島々のなかで2番目に大きいイスパニョーラ島の東側約3分の2を占めるところにある共和制国家(西側はハイチ共和国)。

面積は48.442平方キロメートル、九州に高知県を合わせた広さです。

2021年世界銀行情報で人口は1,095万人。首都はサントドミンゴ

いくつかの山脈と平野からなる土地には、大きな滝やカリブ海で最大の湖があり、1492年コロンブスが発見し上陸した際、世界で最も美しい風景だと称えたそうです。

 

どんな絵本かな…

踊りが大好きで底抜けに明るい気質のドミニカ人。

本書の絵も、明るい色彩と独特なタッチで描かれています。どこかマチスの絵画を思い起こさせる絵です。

はっきりと鮮やかな青色で描かれた山や大きな木の幹に、カリブ海やその土地ならではの日差しを感じます。

 

村から少し離れた谷間の部落に住んでいる、仲の良い8人家族の物語。5人の子どもたち、お母さん、お父さん、そしてお祖母さん。

自然豊かな、のどかな土地で、お互いを大切に思いやりながら暮らしています。

 

物語は5人の子どもたちの中のふたりを中心に進みます。

7歳の双子のペドロとアニータは、ある日弱って道に落ちている小鳥を見つけます。自分達が助けなければならないと決めたふたりが小鳥を家に連れ帰ると、お母さんお父さんお祖母さんは…

 

仲の良い家族のやりとりが心温まるお話し。小鳥が元気になって大きくなり、鳥かごから飛び立つ時、別れを悲しむ双子にかけたお祖母さんの言葉が優しく印象的です。大人が子どもへ何をどう伝えるか、家族の在り方を再認識できる物語です。

 

著者について…

1936年ドミニカ共和国モンセニョール・ノウエル州生まれ。首都サントドミンゴの国立美術大学に学ぶ。ドミニカ共和国を代表する現代画家のひとり。2011年逝去。

 

タイトルの「鳥たちの木」、物語のおしまいは「自由」がテーマとなっています。

ドミニカ共和国の歴史は、先住民の虐殺、欧米による植民地化や軍事占領、隣国との戦争、内戦…と長く苦難に満ちた時代がありました。

物語のなかの小鳥は、自由になり羽ばたいたのち、多くの仲間をつれてペドロとアニータの家にある大きな木へ戻ってきます。ふたりはこの木を「鳥たちの木」と名付けるのです。

苦難の歴史を乗り越えた国の「自由」のとらえ方をそこに見たような気がしました。

 

締めくくりは、とにかく明るいドミニカ共和国発祥のダンス「メレンゲ」で。

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