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一期一会の本と日常のおはなし

童話「きんいろのカラス」

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日を追うごとに冬が近づいています。植物たちも休息の時期に入ったようです。

「 きんいろのカラス 」( 偕成社 1969年9月第1刷 ) 著者 いぬいとみこ 画家 朝倉摂

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まず読んで感じたことを…

生きるということは、厳しいことです。

平和のなかにいると、気がつかないかもしれないですが、本当は厳しいです。

 

力を持っている者は、どんな思いでも叶えることが可能だけれど、

弱者は、歯向かう術もなく奪われ、沈黙のなかにいるしかない。

それでも、生ある限り生きる。

その思い、その魂を一瞬の輝きに込めて。

 

お話しの内容は…

この物語は、日本神話を古代の庶民の側から描いた創作物語。

 

貧しいけれど、平和に家族と暮らしていた主人公7歳の「とりひこ」。お父さんお母さん4歳年上の兄たつひこと5歳の妹さおりと一緒に、幸せに暮らしていました。

ある日お父さんが仕事中の事故にあい死んでしまいます。同じ日にとりひこが拾ったのがきんいろのカラスのひなでした。とりひこは「きんいろ」と名づけ大切に育てます。

 

周りの村人は、父の死と同じ日に現れたきんいろを不吉の象徴のように捉えて忌み嫌いますが、とりひこは気にしません。

とりひこは無邪気に遊ぶきんいろが、どこにでもいる普通のいたずら好きなカラスだと知っているからです。

 

ところがある日、村の平和は突然終わりをつげます。遠い国から現れた「いくさびと」は、村の全てを奪い取り、さらには、きんいろを勝利に導く特別な鳥に仕立てようと躍起になり、利用した挙句、事実を隠すために殺してしまうのです。

 

乱暴な大人の身勝手な解釈に翻弄される子どもときんいろのカラス。

力のある者の傲慢によって、平凡で穏やかな幸せは、あっけなく抵抗することもできずに奪われてしまいます。

弱き庶民の生き抜く術は、じっと身を潜めること。

しかしそれは決して、魂が屈することではありません。

とりひこたちは、年に一度一晩中踊り続けます、激しい怒りや恨みをこめて、いつまでも。

 

著者と日本神話について…

著者は、1924年東京都生まれ。幼稚園や保育園勤務を経て、児童文学を創作。1954年「ツグミ」で日本児童文学者協会新人賞を受賞したのをはじめ、その著書は数々の賞を受賞しています。2002年逝去。

著者は、日本の古代を振り返りながら、子どものための抒情詩的な文体を探りたくて、この物語を書いたそうです。

 

日本神話に出てくる「八咫烏」(ヤタガラス)。この物語は、ヤタガラスをモチーフにしているのでしょうか。

ヤタガラスは、カムヤマトイワレビコスメラミコト(長い!)のために天界から遣わされた道案内の神通力を持つ神聖な生き物とされています。神の力を持つ3本足のカラス、神聖な存在として現在も様々なところでシンボルマークになっています。

カムヤマトイワレビコスメラミコトとは、日本の初代天皇神武天皇として即位する超重要人物です。

 

神話は大人の都合だったのでしょうか。それとも真実?

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