10月もはんぶん過ぎました。
「パパゲーノとパパゲーナ」(福音館書店 2017年11月 初版) 作者 小西英子
どんな本かな?…
タイトルを見ただけでピンときた方はオペラ通、私のように「どこかで聞いたことがあるけれど、なんだったっけ?」と思う方もいるのでは。
この絵本は、モーツァルトのオペラ「魔笛」をもとに、その登場人物のなかでも、脇役だけど人気のキャラクター「パパゲーノ」を主人公にしたもうひとつの物語です。
さすがに「モーツァルト」や「魔笛」はなんとなく知っていましたが、詳しくはなく、この機会にネット検索で「魔笛」のあらすじを読んでみました。
…もっともっと恐ろしいドロドロしたストーリーかと思っていました。大人になったからか、それほど怖くなかった。
とは言え暗い雰囲気の場面が多いオペラの中で、「パパゲーノが登場する場面だけは、明るく、楽しく、観る人の気持ちをやわらげてくれます。」と作者は語っています。
どんなストーリー…
パパゲーノは森にすむ笛の上手な陽気な若者です。
パパゲーノの笛の音が鳴ると、小鳥たちがいっぱい集まります。
幸せに暮らすパパゲーノですが、お嫁さんを探して一羽の鳥と旅に出ます。
そこには、いろいろな試練が待っていました。お嫁さんを見つけるのは大変です!
物語は、「魔笛」のストーリーに基づいて進んでいきますが、
オペラのなかでも明るい存在のパパゲーノ、主人公となったこの絵本では、怖がりだけど、より明るく陽気に描かれています。
イラストもこのストーリーを盛り上げてくれます。しあわせな場面では鮮やかなグリーンやイエローやピンクが使われて、見る人をおとぎの国に連れて行ってくれます。
もうひとつのパパゲーノ…
パパゲーノを知ろうと検索したことで、思いがけない知識を得ました。
パパゲーノは「死にたい気持ちを抱えながら、その人なりの理由や考え方で”死ぬ以外”の選択をしている人」のことを表す言葉でもあります。
自殺の危機を乗り越えた人の話や報道で自殺が減ることをパパゲーノ効果とも。
オペラ魔笛のパパゲーノは、愛する人と引き裂かれ絶望して自殺しようとしますが、現れた3人の童子の精霊に諭されて自殺を思いとどまりました。そのことが由来となっているそうです。
1791年の初演から230年以上経った今、パパゲーノがこのような意味で使われているとモーツァルトが知ったらどんな風に思うのでしょう。
絵本の最後にも紹介されている「パパパの二重唱」。たくさんの方が歌われているなかから2動画を。私はけっこうどっちも好きです。