hon de honwaka

一期一会の本と日常のおはなし

美しくて切ない絵本

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今日はスポーツのイベントに参加することになっています。でも運動神経鈍いので見るほうでの参加です。

海沿いのほうへ向かいます。プチキューいるかな?

「 貝の子プチキュー 」( 福音館書店 2006年6月発行 ) 作者 茨木のり子  絵 山内ふじ江

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茨木のり子さんの絵本…

心に染みる美しい絵本です。そして、美しいだけでなく、切ない切ないお話しです。

 

小さな小さな貝の子プチキューが、美しい宝物を探して懸命に岩を登っていくお話し。

物語は、こんなふうにはじまります。

プチキューは ちいさな ちいさな 貝の子どもでした

いつも ひとりぼっち

さみしくなると エンエンエンと 泣きます

 

くだのような かわいい 口を パカッと あけると

ミジンコや ちいさな さかなや もずくや すなまで はいってきます

 

おなかが いっぱいになると キリキリ 貝ばしらを しめて パチン

あとは うつら うつら ねむります

 

読み終わったあとは、プチキューが愛しくて愛しくてたまらなくなりました。

結末にびっくりしましたが、しっかりと受け止めたいと思います。

絵本と著者について…

まず、この絵本について。

縦29cm×横31cmのとても大きな絵本です。ページを開くと、物語の世界に一気に惹きこまれます。

この作品は、詩人茨木のり子がまだ詩を書き始める前の、1948年、10代の終わりに、朗読のために書いた童話です。そして時を経て絵本化され、作者の生涯において唯一の絵本となりました。(絵本化にあたり、文は大幅に書き直されています。)

 

童話に添えられた、画家山内ふじ江の絵も素晴らしい。画家が長い間をかけて心血を注いだ代表作です。海のなかの不思議で幻想的で神秘的な情景と可愛らしいプチキューが、いつまでもいつまでも心のなかにやさしく漂うようです。

 

そして著者について…

茨木のり子は、1926年大阪生まれ。1950年ごろから詩作をはじめる。詩集やエッセイ、童話など数々の作品があり、日本を代表する女性詩人。2006年逝去。

こちらのサイトを読みました。作者の潔い人生と、「自分の感受性くらい」(1975年)「汲む」(1962年)「倚りかからず」(1999年)など心を打つ詩の数々が詳しく解説されています。

www.nhk.or.jp

戦争への怒りを女性の立場からうたった詩「私が一番きれいだったとき」は、多くの教科書に掲載され、アメリカのフォーク歌手ピート・シーガ―が「When I Was Most Beautiful」として曲をつけました。

www.youtube.com

 

作者の凛とした生き方、「個」を大切にする姿勢は今も人々を惹きつけ力づけています。若くして創られたこの童話のなかにも、その精神は息づいているように思いました。プチキューは言います、

「だれが なんて いったって ぼくは 海で うまれた 海の子だ」

…ありがとう、プチキュー。