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一期一会の本と日常のおはなし

【天のかみさま金(かね)んつなください】日本の昔話

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ちょっと怖くて、じわじわ愉快なお話。

「天のかみさま金んつなください」

日本の昔話

福音館書店 1988年3月 月刊「こどものとも」発行) 

再話 津谷シズ子  

画 梶山俊夫

まず作者について…

作者の津谷タズ子さんは

1941年山形県生まれ。

日本口承文芸学会会員です。

方言での「語り」をされる方。

 

「語り」とは読み聞かせと違い

語り手の方が覚えているお話を

何も見ずに語られるもの。

幼い頃に聞いた昔話を

さまざまな場所で

子どもや大人に語る活動を

されている方だそうです。

どんなお話…

子どもを食べるという山姥と

童の三兄弟の攻防戦です。

 

冒頭は、赤ずきんとオオカミのような

展開が繰り広げられます。

 

山姥が母さんを装って扉を開けるように言っても

出かける前の母さんから言われた通り

三兄弟は慎重に様子をうかがいます。

 

声色の違い、髪の毛の違い、と

母さんのふりをして家の中に入ろうとする

山姥のウソを次々と見破りますが

山姥も負けてはいません。

 

山芋を手に塗って白くしたりと

あの手この手で誤魔化して三兄弟に迫ります。

 

ついに山姥の攻略に騙され

扉を開けてしまった三兄弟に

山姥は容赦なく襲い掛かりました…

方言まじりで語られる昔話は迫力があります。

音読での語りを聞いたら、もっともっと怖いかも。

 

家の中に押し入るときは「ずんが ずんがと

騒ぐ童は「おっかねえ こえで、ごしゃがれたと。」

濁音のついた方言は迫力があります。

 

ちなみに「ごしゃぐ」は検索したところ

秋田県の方言で「怒る」「叱る」の意味。

画家の梶山俊夫さんの絵は

三兄弟の可愛らしさや

風景ののどかさも軽妙に表現しながら

山姥の異様な姿形はおどろおどろしく

気味の悪さが画面いっぱいに迫ります。

 

さて、表題の「金(かね)んつな」とは。

 

山姥に追い詰められた兄弟のふたり。

逃げ場を失って天に向かって叫びます。

「金んつなください」。

すると天からするすると降りてきたのが…

 

その先も怒涛の展開が待っていました。

それは読んでのお楽しみに。

ところで

気になったのは物語の最後に出てきた言葉。

とんび すかんこ ねえけどわ。

??????

調べてみるとこれは

昔話を語るときの結句

 

結句とは

お話の語り納めに

語り部がその地域特有の言葉でしめくくること。

そのため地方によって異なり

沢山の結句があります。

 

そしてどうも

「これで終わり」ということを

ことさら強調するために

言葉数が多くなり

言葉の飾りが増えていったらしいです。

 

改めて

とんび すかんこ ねえけどわ。

 

正確な意味は分かりませんでしたが

秋田県の方言で

とんび」は

「鳶」や「男子の和服用防寒外套(マント)」のこと

 

すかんこ」は

「スイバ(酸葉)」

(道端によく見かける草丈60cm前後の多年草

 

ねえけどわ」は

「もうこれ以上何も無いですよ」

といった意味のようです。

 

音の響きや

物語とは全く関係ない言葉で

「もっとお話して」とせがむ子どもたちに

お終いを強調したのでしょうか。