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一期一会の本と日常のおはなし

【橋の上で】少年の心を救ったのは?

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もし少年を見かけたら、こんなふうにできたら。

「橋の上で」

河出書房新社 2022年9月 初版) 

文 湯本香樹実  

絵 酒井駒子

どんな絵本…

生きていくのは楽なことではない。

楽なひともいるかもしれないけれど

多くのひとにとっては

なにかの壁にぶつかって

生きることから逃げ出したいと

それは子どもであっても、思うことがある。

 

本書は表紙にある少年の一人称で語られる。

橋の上から川の流れをじっと見つめる

少年の気持ちは辛いものだ。

濡れ衣やいじめ、

今の少年の身の回りを包んでいるのは

受け止め難い現実。

 

文章は短く簡潔に沈んだ少年の心の動きを表現し

イラストは単色で少年の心を映すかのようにほの暗い。

 

どこから現れたのか誰なのか

橋の上の少年の隣に、

いつの間にかひとりの大人の男がいた。

その男との対話で、

少年は川に飛び込むことをやめ家路へ急ぐ。

 

この絵本では少年のその後も描かれています。

感想を…

現れた男の一言が少年を生きる道へ導きました。

特別な諭しの言葉ではありませんでした。

ただ自分の内なる命の響きに耳を傾けるように

うながした言葉であったと思います。

 

自分がそして誰かが辛い岐路に立ったとき、

どうすればよいのかを一つのヒントとして

見ることができました。

大人も子どもも

生きにくさを抱えているひとの多い現在に、

寄り添うように放たれた作品だと思います。

 

休日のひととき、静かに向き合いたい絵本。

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(シャガ:日陰でも育つ常緑多年草

冬でも枯れない丈夫な性質をしています。)

著者のプロフィール…

湯本香樹実さんは1959年東京都生まれ。

テレビやラジオの脚本家であり

小説家として主に児童文学を手がけています。

1992年に発表した最初の小説

夏の庭 The Friends」は

日本児童文学者協会新人賞や

海外のミルドレッド・バチェルダー賞などを受賞し

映画化やラジオドラマ化されました。