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一期一会の本と日常のおはなし

【おなじ星をみあげて】バンド・デシネ作家の絵本

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辻仁成さんの訳も読みどころです。

「おなじ星を みあげて」

春陽堂書店 2021年8月 第1刷)

作・絵 ジャック・ゴールドスティン  

訳   辻 仁成

 

原題は「les étoiles」日本語訳だと

によって出会い

によって結ばれた少年と少女のお話し。

 

作者のジャック・ゴールドスティンさんは

バンド・デシネ(フランス流コミック)の作家です。

 

軽妙なスタイルの線描写や、

ところどころコマ割りの技法が使われていて

本書も随所にコミックの雰囲気が感じられます。

 

またこの絵本は

カナダ国内で最も権威のある児童文学賞

「2020TDカナダ児童文学賞」と

ケベック書店賞ーユース部門」を受賞。

 

少年と少女のピュアな出会い別離

そしてお互いを一途に思い続け

再びめぐり逢う物語

高い評価を受けています。

舞台はモントリオールの労働者階級地区

主人公の少年ヤコブと少女アイシャ

ふたりはマイルエンドの公園で出会います。

 

同じ星や宇宙の本を読んでいたふたり。

すぐに意気投合します。

 

このとき、彼女の真っ赤なサンダルに見とれたヤコブ

アイシャに一目惚れしちゃったみたい。

文章ではほとんど語られていませんが、

ふたりには

パッと見てわかる服装と髪型の特徴が。

 

少年ヤコブユダヤ

頭髪のサイドの毛だけ伸ばしてねじる

特徴的なヘアスタイル

(頭髪のほかの部分の毛は丸刈り坊主頭)

 

頭のてっぺんに「キッパ」という丸い布を乗せています。

「キッパ」を被る意味は、

神へ頭を隠すことで謙遜を表わしています。

 

ユダヤ人は服装も「服装規定」があります。

慎み深くあるため

「ヒジ、ヒザ、鎖骨の露出、および派手な色や模様、ボディーラインのでる服の着用は禁止」です。

 

素足に赤いサンダルはもってのほか。

 



少女アイシャイスラム教徒に特徴的な

ヒジャブ(へジャブ)をつけています。

 

ヒジャブアラビア語で「覆うもの」を意味します。

イスラームイスラム教)では、女子の服装に関して

シャリーアイスラーム法)で規定しています。

(イラン・イスラム革命後のイランでは

7歳以上の少女はヒジャブが強制されています)

 

この特徴的な服装や髪型は、

それぞれの強い主義や思想を表わしているのです。

この物語はヤコブ少年の一人称語り

 

ヤコブの気持ちに

宗教や人種の隔たりはありませんでしたが、

周りの大人たちは違っていました。

 

まったく異なるふたりの環境。

父親たちは、ふたりの交流に大反対。

大喧嘩の末、アイシャ家族はどこかへ引っ越してしまいます。

 

そして、月日は流れ

子どもの頃の夢を叶えて

NASAに勤務することになったヤコブ

特徴的な髪型もやめたみたいです。

ある日、大きな天文会議に参加すると

そこにはアイシャが…

自由奔放なようで細部にまでこだわった作りの絵。

 

アイシャのへジャブが偶然外れ

豊かな髪の毛があふれだした様子は

まるで超新星の爆発のようです。

 

水彩画のような淡い色合いと軽やかなタッチなので

父親たちの主義の違いによる諍いも

重すぎることなく描かれています。

 

周りの反対に流されることなく

夢を貫いた少年少女の姿が

おしまいまで爽やかな絵本です。

ところでこの絵本には

宇宙飛行士の山崎直子さんの寄せ書きが添えられています。

素敵な言葉を見つけたので抜粋します

…私たちの身体は、元々は星のカケラで出来ていて、夜空に輝く星たちと兄弟。…

日頃意識することなく、忘れていた原点を

思い出させてくれた言葉です。

みんなもともとは一緒の存在なのでした。

 

なぜか無性にこの曲が聴きたくなりました。よろしければ、みなさんもどうぞ。三番まであったんですね~

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