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一期一会の本と日常のおはなし

【親方と神様】出会いは大切

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出会いは宝もの。

「親方と神様」

(あすなろ書房 2020年2月 初版)

著者 伊集院静  

イラストレーション 木内達朗

 

この作品について…

物語の情景を清らかに表現した

美しい挿絵が数ヶ所に織り込まれた

短編の小説です。

 

本書のそで部分の紹介文を。

鋼と火だけを相手に、

人生の大半を過ごしてきた鍛冶職人、六郎の前に

現れたのは澄んだ瞳をした少年だった。

少年の思いがけない申し出に、六郎は……。

 

どんなストーリー…

主人公は12歳の少年「浩太」と老齢の鍛冶職人「六郎」。

六郎を親方と慕って毎日鍛冶場に通う浩太。

このふたりの出会いと別れが主軸となり

六郎の過去、浩太の未来が交差して物語は進みます。

 

たとえその期間は決して長いものでなくても

生涯心に刻まれる出会いがあります。

この物語では、その時間がそれからの浩太を支え

後の生き方に大きな影響を与えます。

 

物語の内容は、奇をてらうものではありません。

大人なら先のストーリー展開が想像できるものかも。

にもかかわらず、

物語の終盤、主人公が涙するのとともに

私も一緒に泣いてしまいました。

何の涙かな?

悲しみ、ではなく切なさ、かな。

 

信念を貫いて生き切った六郎と

その六郎から大切なものを受け取った浩太

 

子どもの頃に読んでもきっと泣かなかった。

大人になった今だから

勝手に涙が出てきちゃったように思いました。

 

メメントモリ」 ひとは必ずいつか死にます。

けれど死んで何も残らなくなるわけではない。

人生で大切なものは次の世代に受け継がれ

育まれていく。その想いはまたその次の世代へ…

そんなことを、私はこの物語から受け取りました。

 

浩太と六郎、生きていくのに大切なものを

手渡したい相手・受け取りたい相手がいるって

しあわせなことですね。

 

著者と本作について少し…

著者の伊集院静さんは1950年山口県生まれ。

作品に第12回吉川英治文学新人賞受賞の「乳房」や

第107回直木賞を受賞した「受け月」など著書多数。

 

本作品は「少年譜」(2009年/文藝春秋)に収められた

「親方と神様」を単行本化したものです。

 

この作品、子ども向けには少し難しい

言葉や言い回しがあるように思いました。

難しそうな漢字にはふりがながついています。

「隧道」ふりがながついてなければ

私は読めませんでした。(私だけかもですが)

 

すべてが既知の言葉で書かれていないことは

新たな文字や言い回しに出会い

それを自分のものとして身につけていく

大切な機会になりそうです。