hon de honwaka

一期一会の本と日常のおはなし

自分の心と向き合うとき

物語に登場するディクソンさんの手作り桑の実アイスクリームがおいしそうだったので、隣町にある桑の専門店に行ってみたくなりました。

  「 ジュリアが糸をつむいだ日 」 ( 徳間書店 2018年12月 初版 )     作者 リンダ・スー・パーク 訳者 ないとうふみこ 絵 いちかわなつこ

 

 

舞台はアメリカ・プレーンフィールド…

物語は、主人公のジュリアと親友パトリックを中心に進みます。

ジュリアは7年生の韓国系アメリカ人。7年生というと12~3歳かな。パトリックはご近所さんで同級生の白人。

ジュリアは学校で見た目やキムチの臭いでからかわれてから、「韓国っぽい」ことに抵抗があります。

でもそんなキムチのおかげでパトリックとは親友になりました。

 

日本にいる日本人や韓国にいる韓国人なら感じることのない人種差別、

アメリカに住んでいるからこそ、ジュリアはアイデンティティの問題に子どもの頃から向き合うことになります。

 

ふたりは「楽農クラブ」の自由研究に、ジュリアのお母さんが提案した「カイコの飼育」をはじめようとしますが…

ジュリアは本当は乗り気じゃありません。でもそれをはっきりパトリックに言えない。なぜなら「韓国っぽい」ことが理由だから。

なんとか訳を知られずに研究を阻止しようとしますが、そのためにパトリックとけんかしたり。

 

「問題はいつでも存在していて、真剣に考えたときだけ見えてくるんじゃないかな。」

ジュリアはいろいろな経験を通して、問題があったときは、ずっとそのことについて真摯に考え続けることが大切だと思い至ります。

いろいろな人との出会いや体験を通して、悩んだり、喜びや悲しみと向き合いながら、ふたりが成長していく物語です。

生き物の命に向き合うジュリア…

最初は乗り気でなかったカイコの飼育ですが、カイコの世話をするうちに、一匹一匹の見分けがつくほど愛情を感じるようになります。

 

…カイコの行く末を知っている私、佳境に入ると弱気の虫がでてきて、途中で読むのをやめたいと思ったりしました。命をいただくということは、生きていたら避けては通れないことなのですが、何度遭遇しても切なくなります。

 

育てているうちにカイコがどんどん可愛くなっていったジュリアは、その時をどんな風に迎えるのでしょうか。

注目ポイント…

ジュリアの向き合い方、とてもカッコいいです。

失敗はキチンと受け止め、辛いことにも真っ直ぐに向き合います。

反省したらちゃんとあやまり、感謝の気持ちも忘れません。

カイコに対しても逃げずに向き合います。

 

それから、もうひとつおすすめポイントが。

ジュリアの5歳下の弟、やんちゃなケニーにも注目です。いい味出してます。彼も物語のなかで、ふたりと一緒に成長しています。

著者について…

著者は1960年、この物語の舞台イリノイ州生まれ。「モギ ちいさな焼きもの師」でアメリカ最高の児童文学賞ニューベリー賞を受賞しています。

アジア系住民と黒人とのいさかい、特に1990年代にロサンジェルスなどで黒人とアジア系住民の間に起きた暴動にとても胸を痛めている、とあとがきにありました。

本書には、お互いを理解し合うためのささやかな一歩につながってほしいという願いが込められています。

 

読了後、この方の包み込むような歌声が聞きたくなりました。

www.youtube.com