hon de honwaka

一期一会の本と日常のおはなし

原題は「猫の旅」(Kattresan)

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明日外出の予定があるので、天気予報が気になっています。屋外でのイベントで大雨なら中止、晴れると暑そうなので曇りが希望なのですが、どうなるかな。

それにしても、こんな風に猫の背中に乗って一緒に出掛けてみたい。

「 リッランとねこ 」 ( 福音館書店  1993年4月 初版 )         著者 イーヴァル・アロセニウス  訳者 菱木 晃子

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とっても可愛いイラスト…

といっても王道とは言えないかも。これが猫?って思う方もいるかもしれません。背表紙に描かれた猫に至っては、猫だといわれても猫には見えない迫力。神社の狛犬のような、ちょっと怖い風貌をしています。

本作は著者の最愛の娘をモデルにした小さなリッランが、猫の背中に乗って旅に出るところからはじまります。旅の途中ふたりはニワトリやブタやワニや、いろいろな生き物に出会います。

シンプルで自由な筆遣いで描かれるイラストと、軽妙なテンポで進む愉快で意外なストーリーに、ページをめくるたび夢中になってしまいます。

著者のことを知れば知るほど…

この作品が愛おしくなりました。検索してその経歴や自画像などの絵画にたどり着きました。著者は1878年スウェーデン生まれの画家で、先天性の血友病のため30歳の若さで亡くなります。

愛娘のために描いたこの本は、亡くなった年でもある1909年、著者の死後に初版されました。今から100年以上前の絵本ですが、スウェーデンでは今でも子どもの本の古典として人気があります。

著者は、故郷を遠く離れた美術学校へ進みますが、「自ら好きなように描きたい」と再び故郷へ戻ります。その作風の多くは退廃的なものや風刺的なものでした。ヨーデボリ美術館には彼の絵画が収蔵されています。

「自ら好きなように描きたい」…早くから大病と向き合ってきた著者には、命には限りがあること、その時間の重みが常に強く心にあったのではないかと思います。

著者の描いた自画像に、とても惹きつけられました。暗くやつれて青白い顔、少しななめからこちらを見つめる目線は鋭く険しいものです。その表情に著者の苦しみと悲しみを感じます。けれど、そんな彼の頭には可憐な花冠、やわらかな色とりどりの小花で作られた活き活きとした花冠が載っています。愛娘をとても可愛がっていた著者、この花冠は辛い彼の人生を優しく彩った愛娘のように私には見えました。

「リッランとねこ」、本作に悲しみの色はどこにもありません。猫のお腹が破れてしまっても縫い合わせて復活です。全編を通して無邪気に流れる時間に、本作に注がれた愛娘への深い愛情を感じました。

一番インパクト大だったのは…

背表紙の迫力ある猫ですが、どこかで会ったことがある気が。何度も見ているうちに思い当たりました。同じように乗り物になる猫、日本アニメのあの超名作の「ネコバス」です。こちらの猫もきっと、100年後も子どもたちに愛され続けていることでしょう。

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