今回のお話は「処世術」がテーマのひとつ。子どもの頃に処世術を教えられたのと教えられないのでは、だいぶ人生違ったかな。
「声に出して読む インドにつたわる パンチャタントラ物語」(出帆新社 2018年6月初版) 著者(再話)マノーラマー・ジャファー 絵 小笠原まき 訳 鈴木千歳
どんなお話?…
この絵本の基となる「パンチャタントラ」は、
今から1600年も昔、
3人の王子たちに、政治、統治、処世、倫理、外交等について教育するため、
インドの言葉「サンスクリット語」で書かれた、
鳥や動物が擬人化されて登場する世界最古の寓話集です。
https://www.kodomo.go.jp/anv10th/archive/event/pdf/20040522_02.pdf
(こちらのサイトPDFに「パンチャタントラ」が詳しく解説されています。)
本書は、「パンチャタントラ」のなかから選ばれた30話の短い寓話からなる絵本。
選者である著者により、現代に合わせた味付けや省略がされ再話したものです。
どれもこれも、驚くほど、ほのぼのしないお話しばかりです。
世界最古の子どものお話の内容は、結構恐いです。結末に情け容赦のないこともしばしば。失敗すると食べられて、けんかすると死んじゃいます。
賢く立ち回った者は生き残り、愚か者は搾取されます。
冒頭は仲良くしあわせに暮らしている動物たちが、ささいなことで争いになって、食べられてしまう。「もうじき食べられる」と言っている時間もなく、バッサリと。
唯一といっていいかと思いますが、日本の子どもにもインドの子どもにも親しめるようにと描かれたイラストは、かわいいです。お話しの内容のシビアな部分を、やわらげてくれています。
きっと1600年前も…
子育ての悩みは今と同じにあり、いくら頭ごなしに言っても言うことをきかない子どもを、どうにかして良い子にしたいという親心が、お話しを作らせたのではないかと思いました。
一番大事なことだからか、登場人物や動物の行いが生死に関わる話が多いです。
道徳的なだけではなく、処世術、生きるために賢くなる教えが散りばめられています。
早とちりはだめ、
考え無しはいけない、
良い行いをしても誤解され殺されることもあり、
善悪に関係なく、ちょっとした思慮にかけた行動が最悪の事態を招いたり。
「結果をよく考えて予測し、想像力を働かせて適切な対処をする。」
そうしないと、どんな悲しいことや恐ろしいことが起こるかを伝えることで、子どもは自ら考えることを身につけていきそうです。
どんな子どもにも、生きるために必要な知恵の数々を、物語を通してなら伝えられる。物語の力って偉大です。
それにしても、私にとっては結末が意外なものばかり。自分が、物語はこうあるべき、とか、こうなるんでしょ、こうじゃなきゃ、っていう固定観念に縛られていることに気付かされました。
お話のなかにときどき登場するインド原産のバニヤン樹(Banyan Tree)。
インドの聖木。別名ベンガルボダイジュ。
高さ30mになり、根は太く、横に伸びた枝から多くの根が生え、地上にとどくと幹のようになるので、一本の木が林のようにみえる大きな木です。