hon de honwaka

一期一会の本と日常のおはなし

音と匂いで感じる山歩き

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昨日一緒に出掛けた友人が、楽しいイベントのおわりに「ああ、明日は月曜日、また一週間がはじまる」と言いました。そんな月曜日、

「飛ぶための百歩」(岩崎書店 2019年8月第1刷) 作 ジュゼッペ・フェスタ 訳 杉本 あり イラスト まめふく

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どんなお話し?…

中学を卒業したばかり、14歳の少年ルーチョは、幼いころに視力を失いますが持ち前の向上心で生活の困難を次々乗り越えてきました。思春期真っ只中の彼は、目が見えないことで誰かに頼ることを頑固に拒否しています。助けを拒むルーチョを、おばのベアは心配しつつ見守っています。

この物語は、そんなふたりが夏のアルプス山脈のドロミテ渓谷を山歩き、その経験を通してルーチョが成長する姿が描かれています。ちょっとスリリングな展開もあり、ハラハラしながら読みました。

なんといってもルーチョが耳や鼻、五感で感じる、美しい森林の表現が素晴らしい。鳥のさえずり、森が発する爽やかな香り、ルーチョは見えなくとも全身で山の素晴らしさを受け止め感動します。

タイトルのわけを含め物語の内容は、読む前に知ってしまうのはもったいない感じです。ルーチョと一緒に体験し、その喜びや成長を味わっていただきたいと思います。

著者について…

ジュゼッペ・フェスタはイタリアの作家。本作は動物と山を愛する盲目の少年との出会いから生まれたそうで、日本でのデビュー作です。

本作が日本の課題図書に選ばれたことをきっかけに著者から寄せられた、日本の読者に向けてのメッセージ動画があります。「書くことで現実に立ち向かう」「今起きていることに自分なりの考えを表すため」「この世界を理解するのを手助けすること」が物語を紡ぐ役割のひとつだと語っています。

食いしん坊の感想…

メインテーマとは直接関係ないのですが、物語のなかにはイタリアの美味しそうな食べ物が登場します。

山小屋で出される「ポレンタ」はトウモロコシの粉に水やスープを加えて火にかけ、固く練り上げたもの。デザートには「チョコレートタルト」。汗っかきの比喩になった油の多いソーセージ「モルタデッラ」。ルーチョが山歩きに持参した2種類の「パニーニ」、ひとつはハムとブローヴォラときのこ、もうひとつはサラミとスライスチーズとミニトマトのオイル漬けがはさんであるもの…うーん、全部美味しそう、全部食べてみたい。

身近な出来事に…

折しも数日前の地元の新聞に、ある夏祭りの主催団体が、盲導犬の介助を受けた視覚障害者の踊りへの参加を断っていたと掲載されていました。たまたま出会ったこの本を読んで障がいについて考えさせられたばかり。わが身に起こったとき、どんな風に向き合うかを常々考え、障がいを持つ方の成長の妨げにならないような対応をしたいです。「こういう理由だからできない」ではなく「どうやったらできるか」という環境になればいいなと思います。

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