hon de honwaka

一期一会の本と日常のおはなし

【からすたろう】ハブられた男の子の話

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今もむかしも、いつもどこかで。

「からすたろう」

偕成社 1979年5月1刷 2008年6月59刷) 

作・絵 八島太郎

まず作者の紹介から…

はじめに作者のプロフィールを紹介したい

と思ったのは、この物語が

作者の体験に基づいたものではないか

と思ったからです。

 

作者が実在の二人の恩師に贈った

この絵本のあとがきには

ーーーこの物語に登場する磯辺先生は、この恩師二人の思い出をあわせてつくったものである。…

とあります。

 

作者の八島太郎さんは1908年鹿児島県生まれ。

軍事教練を拒否して東京美術学校(現・芸大)を退学。

1939年に渡米。

1943年に自伝絵物語「あたらしい太陽」を発表。

戦後、故国での体験に基づいた絵本を

数々アメリカの出版社から発表、

想像通り本作もその中の一作だそうです。

 

本作「からすたろう」はコルデコット賞次席、

絵本にっぽん賞特別賞を受賞しています。

どんな絵本…

まだ子どもたちが小学校に

着物を着て通っていた頃のお話。

 

村の学校に通う「チビ」

と呼ばれる男の子はいつも「ぼっち」

 

先生も生徒も誰も相手にしていません。

授業中床下に隠れていたり

誰にも読めない変な字を書いたり

周りのみんなには男の子が奇妙に見えたみたい。

 

自分に理解不能なものはちょっと怖い

みんなが敬遠したのはそんな理由からでしょうか。

 

寂しさも見せずに淡々と

学校に通う男の子の姿が見ていて切ないです。

 

「ハブられる」とは。ネットの情報によると、

…「仲間はずれ」にされること。いじめられるというよりは、学校や会社で自分たちとは雰囲気や言動の違う人と距離を置き、仲間はずれになることを意味します。

 

しかし、男の子の環境は

新しく赴任してきた先生によって

がらりと変化します。

 

新しい先生は

男の子のまだ知られていない一面を

みんなに披露します。

 

奇妙に見えていたものが

相手をよく知ることによって

鮮やかに美しいものへと変わったのです。

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私達は知っているようで

本当には知らないことがたくさんあると思います。

自分のことも

相手のことも

今生きている世界のことも

よく知ることがなによりも大切なことだと

この絵本から学びました。

 

(自分のことを知ることが

きっと一番難しいですね。

カラスを嫌いという人が多いですが

本当にカラスのことを知っている人が

どれだけいるでしょうか。)

 

そして理解が深まったとき

相手を受け止め

自分を顧みていく

 

物語が進み

周りの子どもや大人にも

そして主人公の男の子にも

明るい光が射したとき

私の心にも同じ光が射しこみました。

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絵についての感想も。

蓑を付けた少年の格好にも木造の校舎にも

なぜか古びた印象を感じませんでした。

時代を問わず通じるものが

この絵本の絵にはあります。

絵の力にも注目していただきたいと思います。