リアルだけどシルクハットが似合う虫です。
「空からふってきたおくりもの」
(化学同人 2022年11月 初版第1刷)
作 テリー・ファン&エリック・ファン
訳 よしい かずみ
まず作者について…
作者のテリー・ファンさんとエリック・ファンさんは兄弟。
エリックさんはハワイ生まれ。
ふたりともカナダのトロントに在住で、
オンタリオ美術デザイン大学で学ぶ。
テリーさんの絵は、
伝統的なインクや黒鉛を使った技法と、
現代のデジタル技法を融合させたもの。
エリックさんは大学で
イラスト、彫刻、映像を学び、
テリーさんと共に数々の作品を手がけています。
絵本の見どころは…
なんと言っても
その克明な写実的要素を持ちながら
ファンタジーの要素も併せ持つ白黒のイラストです。
虫たちと彼らを取り囲む花や草などはほぼ白黒。
たった一つの、虫たちが「宇宙から来た?」と
不思議に扱う物体だけがほかの色を有しています。
その物体とは、読者にとっては馴染みのある
子どもの頃に遊んだことが誰でもありそうな
表紙絵の丸い物体なのですが
小さな虫たち目線だと全く違った印象に。
絵本にはテントウムシやクワガタやイモムシ
シャクトリムシにナナフシなどなど
たくさんの種類の虫たちが登場します。
ほぼ白黒で描かれる虫たちの住む世界は
光と影のコントラストが美しく幻想的で
深い奥行があります。
どんなストーリー…
虫たちの住むおだやかな世界に
空から突然降ってきた不思議な物体。
どの虫たちにとっても初めて見るものです。
それぞれにそれが何なのか
あれこれ想像をめぐらします。
ちょっとずる賢いクモが最後に登場し
その物体を独り占めしようとしますが…
見知らぬきれいなのものに偶然出会ったら
その物体の虜になってしまう
独り占めしたくなったり
見せるなら見返りを求めるようになったり。
そんな現実にも起こりそうな出来事を美しく
ときにスリリングに描いています。
お終いのほうに登場する「5本足の生き物」も必見です。
白黒のイラストはあどけなさの中に
大人っぽい雰囲気をそこかしこに潜めているので
大人の方にも楽しめそう。
こちらは以前記事にした同じ作者が絵を描いた作品。
よろしければこちらもご覧ください。
《おまけ》トンボさんを探せ