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一期一会の本と日常のおはなし

【クリスマス・キャロル】クリスマスの大定番の物語

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おそとのねこさんたち用の飲み水が凍っていました。いよいよ寒さ本番です。

クリスマス・キャロル

作 チャールズ・ディケンズ

 

絵本:絵 ブレット・ヘルキスト 訳 三辺律子 (光村教育図書)

小説:訳 村岡花子 (新潮社)

 

 

昨日記事にした「憑かれたポットカバー」を理解したいと、本書も読んでみました。

 

クリスマスの大定番のお話。

主人公のスクルージさんが、

過去、現在、未来の幽霊によって改心するというストーリー。

はじめ、絵本の方を読んでみました。

 

こちらはディケンズさんの原作を、

子どもにも伝わりやすいようにした文章と、

文章で語られなかった部分を絵で表現した印象。

 

文章で語られなかった部分とは

登場するものたちの風貌

街の雰囲気、そして物語の中に潜む恐ろしさ

 

ただ私には少し物足りない感じがしました。

 

そこで小説のほうも読んでみることに。

 

小説を読んだ感想は

まず、比喩的な描写が印象に残りました。

ひとつの物事や人物の心象風景を表現するために

いくつもの比喩を使っています。

絵本では、絵によって表現されていたものが

小説では克明に迫りくる言葉で表現されています。

そしてこれが、この作品の特徴であり魅力と思いました。

 

言わずと知れたストーリーとは思いますが、

読んでいない方のために簡単にいうと

「過去のクリスマスの幽霊」

「現在のクリスマスの幽霊」

「未来のクリスマスの幽霊」が出てきて、

さまざまな情景を

主人公スクルージさんに見せることを通して

彼を改心させる話です。

 

どの幽霊が見せる情景も

悲惨なものは、これでもかというほど悲惨です。

その、これでもかと思わせるのは、比喩の力だと思います。

私が読んだのは新潮文庫村岡花子さんの訳。

 

1952年の出版から半世紀以上経ち、

明治の人ならではの言葉遣いやリズムが

古風な文体と感じられるようになったため

 

現代の読者が読みやすいよう

作品の雰囲気や訳者の語感を壊さないように

訳文に訂正を加えた改訂版です。

 

それでもディケンズさんが作品を書かれた

150年以上前の由緒正しいイギリスの雰囲気が感じられる文体です。

 

訳者の村岡花子さんは本書の解説で

毎年クリスマスがめぐって来るごとに私はディケンズクリスマス・キャロルを読む…中略…何度読んでも、変わらぬ感激を受けるのは、著者ディケンズの愛情と善意がこの作品の中に躍動しているからであろう。

と述べられています。

著者ディケンズさんは、子どものころから家が貧しく大変なご苦労をされたそうです。

数々の職を経て独学で勉強を続け新聞記者に。

その全ての実体験が、作品に活かされています。

本当に経験しているからこそ表せる人間の機微を小説から感じました。

 

もしも本書を若いころ読んでいたら、

スクルージさんは特別に酷い人だと思ったかもしれませんが、今読むと、

ちょっと極端なところはありますが

どこにでもいる普通のおじいさんに見えました。

誰でもスクルージさんを持っていて、

誰でもスクルージさんになりうると。

この小説は読み手の

今までどのように生きてきたか(過去)

今どんな生き方をしているか(現在)

これからどのように生きたいか(未来)

によって、感動するところも、そもそも感動するかも、違ってきそうです。

 

私は

最初に登場するスクルージさんの友人、亡霊のマーレイさんが親切な方だと感心しました。

自分が罪の責め苦にあって大変辛い状況なのに、スクルージさんに同じ思いはさせまいと忠告に現れるなんてエライ!

自分が大変な時に他人を思いやる気持ちを持てたマーレイさんも救われますように。



絵本と小説を読みましたが、やはりおススメは小説です。

 

この作品の魅力は、細やかに丁寧に描かれた比喩にあると思うので

子どもさんにも、難しいかもしれませんが途中でやめてもいいので小説を読んでみてほしいです。